大学の教員という職業柄、企画書を評価する機会が多くある。中には、AIに書かせてそのまま出したと分かるものもある。そうした企画書は、なぜか頭に残らない。
そこで、生成AIに「生成AIで作成された企画書が頭に入りにくいのは、なぜか」と聞いてみた。すると、的確な答えを返してきた。いわく、「AIの文章力が低いからではなく、むしろ文章が整いすぎていて、人間の認知に必要な『引っかかり』が少ないから」とのこと。
確かに、生成AIに企画書を書かせると、背景、現状分析、課題、解決策、効果、KPI、リスク、今後の展開まで、きれいに整理される。論理的にも間違っていない。しかし、読んでいて「頭に入らない」。私が考える理由の一つは、書き手が「誰が、なぜ、この問題に気付いたのか」「この企画への執念」を見せていないことである。
人間がつくった企画書には、「ここがおかしい」「何とかしたい」「だから、このアイデアを思いついた」という思考の跡がある。読み手はその思考を追体験しながら、企画の意味を理解する。一方、AIは最初から完成された論理を提示する。結論に至るまでの引っかかりが感じられないのである。もう一つは、「正しいこと」が多すぎることである。人間は情報を全て理解しているわけではない。「結局、何が言いたいのか」という一本の軸をつかみ、そこから全体をつなげて理解しているのだ。
さらに、AIの文章には具体的な出来事が不足しがちである。「自治体の窓口業務には非効率な部分がある」より、「職員が同じ住所変更の説明を一日に27回している」のほうが、圧倒的に頭に残る。人間は文章だけでなく、その背後にある情景を記憶するからである。
そして、たぶん最も重要なのは、読み手に「自分で考える余白」があるかどうかだという気がする。AIは「つまりこういうことだ」「その理由はこうだ」と、全てを説明してしまう。しかし、人間の理解は書かれていない部分を自分の頭で補完することで深まる。説明しすぎる文章は、読者の脳を参加させない。
これをSNSに書いたところ、友人たちから「ちょうど私もその違和感を覚えていた」という声が多く寄せられた。引っかかりがないことへの違和感に私たちが慣れる前に、生成AI側が修正してくるのかもしれない。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。