旅の蜃気楼

野崎克己さんのこと

2004/06/07 15:38

週刊BCN 2004年06月07日vol.1042掲載

▼魚釣りの好きな方だった。弔辞を聞いていると、故人の人柄が伝わってくる。5月31日、帝国ホテル。「故野崎克己さんのお別れ会」に出向いた。TDCソフトウェアエンジニアリングの創業者だ。野崎さんは4月28日、脳管出血のため死去した。76歳だ。その遺影に向けて白いカーネーションを供える。感謝の念を込めて、「さようなら」とつぶやく

▼創業は1962年。東京データーセンターの社名で事業を始める。当時はまだまだコンピュータは高くて、一般にはなじみ少ない機械だった。一体どんな時代だったのか、コンピュータ関連の月刊誌を見てみる。『コンピュータ・レポート』、学会誌の『情報処理』。この業界の草分け誌の『コンピュートピア』は67年の創刊だ。現在のコンピュータ月刊誌が書店の棚にずらりと並ぶ姿は想像もできない時代だった。が、時代は流れて、TDCソフトも02年3月、東証一部に上場した。

▼コンピュータは70年代に入って急速に普及し、TDCソフトの同業者である情報処理サービス業者は増えた。「人の役に立ちたい」と人一倍願う野崎さんは、業界団体の健康保険組合、厚生年金制度の設立に尽力した。現在の社団法人情報サービス産業協会である。この功労で89年に藍綬褒章を受賞。遺影の前で立派に輝いていた。(本郷発・笠間 直)

  • 1