BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『健全な組織は価値観の経営を目指す ~共感を呼ぶ情報発信力が顧客を創造する~』

2009/12/10 15:27

週刊BCN 2009年12月07日vol.1312掲載

 リコーのCS(顧客満足)畑でキャリアを積んだ人物が著した本。タイトルからは、論文形式の専門書をイメージするが、本文は語り口調で書かれており、とっつきやすい。

 全体的なトーンとしては、「企業経営」を大上段から論じるのではなく、顧客満足を突き詰めていけば、自ずと健全な組織(会社)になっていくという論調で展開されている。サブタイトルにある「共感を呼ぶ情報発信力が顧客を創造する」が、この本のミソと思える。

 CSとは一般的に「カスタマー・サティスファクション」を指すが、これを実現するためには「コミュニケーション」のCと「システム」のSが欠かせないというのが著者の考えだ。社員とお客様と市場(世の中)に何をどう伝えるのかが重要というのである。

 一つの例として、居酒屋チェーン「和民」の創業者・渡邉美樹氏のインタビュー形式の新聞広告が挙げられている。「以前は2020年までに1兆円にするという目標を掲げていた」和民は、単に利益を上げるためにビジネスをしているわけではないという反省に立って、「『100年間で一番たくさんのありがとうを集めた会社』と言われることを目指している」という内容だ。ここにCSの真髄があると著者はみている。

 リコーのCS活動を進めた浜田広、桜井正光という二人の経営トップ、上司だったCS推進室長とのやりとりが盛り込まれており、書かれている内容の説得力を増す役割を果たしている。(止水)

『健全な組織は価値観の経営を目指す ~共感を呼ぶ情報発信力が顧客を創造する~』
田村均著 生産性出版刊(1800円+税)
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