「クラウドコンピューティング」という言葉は、定義はいまだに不明確なものの、すっかり定着しました。それ以前は「データが漏れる」「機密情報は社内に置きたい」という日本企業独特の堅物な考え方が邪魔をして、「クラウド/SaaSの普及はまだまだ先」という声があったものです。
しかし調査会社ITRによれば、2009年の国内CRM(顧客情報管理)市場で、SaaSによる提供がパッケージを上回りました。
2005年の個人情報保護法の施行以降、企業には保有する顧客情報の管理を徹底する意識が生まれました。国内企業では、どちらかといえばクラウド性悪説がはびこり、「雲の中」に顧客の個人情報を置くことへの不安が広がり、自社で管理する傾向にありました。
しかし、少なくともニュースを見る限り、クラウド/SaaS方式で使うアプリケーションから、情報漏えいやシステム停止による企業活動の停滞などの事故は、ほとんど起こっていません。「雲の中の方が安全」という意識が広がったかどうかはわかりませんが、ここへきて、不安点が少なくなったことが、「SaaS逆転」を生んだと思われます。
でも、目を基幹系に向けると、状況は変わります。ソフトウェアベンダーに昨年の状況を聞くと、ERP(統合基幹情報システム)や会計システムは、パッケージが売れに売れたというのです。クラウド/SaaSが本格的な普及期に入るのは、まさにこれからです。(谷畑良胤)
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ITR、国内CRM市場を調査、SaaSがパッケージを初めて上回るメールマガジン「Daily BCN Bizline 2011.1.24」より