旅の蜃気楼

PFUの技術に“ものづくり”の真髄をみた

2011/03/31 15:38

週刊BCN 2011年03月28日vol.1376掲載

【宇野気発】JR金沢駅の7番線。ここから七尾線が出る。車両が少ない電車が来た。これに乗って、車窓を楽しむ。30年以上前、同じ電車に乗ってユーザック電子工業(現社名はPFU)を訪ねた。当時と変わらない田園風景だ。どうしてこの地に会社を構えたのだろうか。オフィスコンピュータのUSACを販売していた内田洋行の創業家筋にあたる久田仁さんに、その理由を聞いたことがある。どうも、創業者と縁のある地らしい。

▼宇野気駅で下車。歩いて5分。PFUは世界一の商品をもっている。スキャナだ。国内市場でも販売台数トップでBCN AWARD 2011を受賞した。スキャナのルーツは1986年まで遡る。オフコンの周辺機器として開発されていた。その開発グループに富士通のプリンタ技術者が統合する。そこでスキャナが生まれ、その事業にブランド商品を集中する。どんな条件のどんな環境にある紙の印刷情報であっても、正確に早く読み取る。これがあるべき姿だ。

▼「コダックの牙城だった中国市場でもトップシェアを獲得した」と、社長の輪島藤夫さん。自信をなくしている日本のメーカーにあって、PFUは、世界一、元気なのだ。宇野気を訪ねたのは、ものづくりでトップになった秘密をうかがうためだった。工場は、まさに“ものづくり”のライブ劇場だ。世界標準がまかり通る昨今の商品にあって、スキャナは、ものづくりの領域が残っている。

▼紙の品質は国によってさまざまだ。「どの国であっても、お客さまのご要望に応えます。うちの技術者はそこを誇りとしています」。アナログの世界に職人の技が生きる。今日の日本企業に欠けているものを見つけたように思った。でも、技術は追いつかれるのでは?「もちろんです。現在、アドバンテージは5年あります。もうその先を歩き始めています」と、力強い答えが返ってきた。(BCN社長・奥田喜久男)

どんな紙でもスキャニングできる製品には、職人の技が生かされている
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