BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪』

2012/03/01 15:27

週刊BCN 2012年02月27日vol.1421掲載

 第二次大戦中のマスコミは、大本営発表を垂れ流し、戦意高揚のお先棒をかついだという汚点の歴史があることは広く知られている。

 昭和が遠くなった現在、そうした汚点のシミも薄れたと思ったら、大新聞の本質は何も変わっていないと警鐘を鳴らすのがこの本である。

 著者は、日本経済新聞社のニューヨーク駐在キャップ、本社編集委員などを経て独立し、現在はカリフォルニアに在住してジャーナリスト・翻訳業をこなす人物だ。

 本書にたびたび登場する言葉に「推定有罪」がある。検察(国)が“灰色”とみなしたら、マスコミはあたかも罪が確定したかのように、いっせいに書き立てる。こうして世論が形成され、裁判官も少なからぬ影響を受けるという構図だ。記憶に新しいところではライブドア事件と、村上ファンドのインサイダー取引事件がある。時代の寵児ともてはやされたホリエモンや村上世彰氏は、検察が動き出した途端、もはや刑が確定したかのような扱いを受けることとなった。

 ごく最近の例では、厚生労働省の村木厚子局長らが告発された郵便不正事件がある。検察が自滅したかたちで無罪が確定した村木局長の場合は、名誉回復がマスコミによって手助けされた希有な例でもある。多くは、検察側に立って「推定有罪」の下に書き立てる。そして、裁判の結果が無罪となっても、せいぜいベタ記事の扱いで終わる。

 メディアの姿勢はどうあるべきかを考えさせてくれる本である。(仁多)


『官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪』
牧野 洋 著 講談社 刊(1600円+税)
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