旅の蜃気楼

中国がソフト・サービスに本腰

2012/06/21 19:47

週刊BCN 2012年06月18日vol.1436掲載

【北京発】北京オリンピック開催地付近は、5月28日の早朝から交通規制が厳しくなった。第一回中国(北京)国際服務貿易交易会(京交会)が国際会議場で開催され、温家宝首相が開会式に臨むことになったからだ。1957年から開催している広州交易会(広交会)に対応した、形のない商品を前面に打ち出して、今年から新たに開催する交易会だ。広交会は物の貿易を主としてきた。広州の先には深セン、その目の前には英国領だった香港がある。中国はこの「広交会」から西側の文明を吸収しながら変化し、発展してきたのだ。

▼今回、北京で開催された交易会は、コンテンツ、サービスといったソフトウェアが主体となっている。いわゆる知財に関わる分野の商品だ。コピーと量産がいとも簡単にできるだけに、ソフトメーカーが中国市場への参入に二の足を踏む事情は理解できる。中国がソフト産業を立ち上げて成長するには、著作権の厳格な運用が絶対条件となる。現状をみるかぎり、コピーが出回る中国でソフト産業をどのようにして立ち上げるのかと、日本や欧米のメーカーの誰もが思うことだろう。しかし今回、中国政府の主導で、全国の省と市の商務部のトップが集まり、主要な大学関係者と企業のトップが一堂に会するイベントを催すこととなった。国を挙げてサービス・ソフト産業の立ち上げに本腰を入れたわけだ。

▼日本からは、JETROの主導によって、日本音楽事業者協会ほか19社が参加した。日本のブースの隣には韓国企業が多く参加していた。まずは日中韓のサービス・コンテンツ、ソフト分野の産業育成の第一歩が始まったのだ。秋には、60年近い歴史を誇る広州の「広交会」が待っている。日本のメーカーには、中国市場の先を見据えた手を打つことが求められている。(BCN社長・奥田喜久男)

中国(北京)国際服務貿易交易会の会場。臨席する温家宝首相に会えると期待したが、残念ながら果たせなかった
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