北斗七星

北斗七星 2012年10月29日付 vol.1454

2012/11/01 15:38

週刊BCN 2012年10月29日vol.1454掲載

▼十和田湖は水面に県境が走っている。太平洋から奥入瀬川を遡行すると十和田湖に至る。湖畔を歩くと、小さな橋がある。幅の狭い川を渡り切ると、そこは秋田県になる。しかし、何の変化もない。県境は行政の境界線であって自然にとっての境目ではないからだ。それでも気分的に県の違いを嗅ぎ分けてみると、確かに心理的には反応があったように思う。何かが違うという思い込みだ。

▼再び青森県に戻って、逗留先を目指した。そこは八甲田山の南麓に位置する猿倉温泉だ。この温泉には宿が一軒しかない。山間にあるにしては立派な建物だ。山小屋ふうの本館とホテルふうの新館がある。露天風呂には硫黄の匂いが充満する。ゆったりした気分でお湯につかった。よき時代を感じさせる趣がある。

▼猿倉温泉は山を下った奥入瀬川辺りの温泉郷にお湯を提供する湯元だ。現在の主人で四代目という。「永き世の一世を護る湯守かな」。日芸(日本大学芸術学部)で学んだそうだ。廊下には、いくつもの生け花と日本画が飾られている。食堂では、料理を盛る器の選定に唸った。主人の気配りが伝わってくる。唯一の難点は通年小屋ではないことだ。豪雪の中の営みに知恵と使命感を感じる。(直)
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