円安傾向が強まると苦しくなるのが、オフショアソフト開発です。日本のオフショア開発の約8割は中国に発注しており、「中国なしには日本の情報サービス産業は成り立たない」(SIer幹部)といわれるほど。
ただでさえ、中国沿岸部は年率10%程度で人件費が上昇しており、円安に振れると円換算ベースの単価高騰は避けられません。まさに、人件費高騰と円安のダブルパンチというわけです。
「じゃあ、ベトナムやミャンマー、インドなど、コストを抑えられそうな地域へ移ればいいじゃないか」という意見も聞かれますが、これも実はそれほど簡単なことではなさそうです。
調査会社のガートナー ジャパンは、中国には対日オフショア開発に従事したことのある人材が、大連に約7万人、北京に約4万人、上海に約3万人規模でいるとみています。日本語や日本の業務システムをある程度理解した人材を万人単位で育成するのは時間がかかりますし、日本のITベンダーが、今すぐ欧米ベンダーのように英語ベースで業務を進められるかといえば、それも難しそうです。
現実解としては、比較的人件費の安い中国内陸部に軸足を移して時間を稼ぎつつ、5年から10年をかけて、中国以外で日本向けのソフト開発の人材を育成するしかありません。
国内のSE・プログラマの生産性向上が叫ばれるなか、オフショア開発の助けなしには、生産性向上の達成は不可能に近い。残された時間は、それほど長くはありません。(安藤章司)
【中国関連記事はこちら】
日中情報サービス産業の未来 新しい協業のあり方を探るメールマガジン「Daily BCN Bizline 2013.1.31」より