営業の真髄に触れる

 おもしろい! ダメ営業マンが伝説のトップ営業所長を上司に迎えて、みるみるうちに力をつけていく過程がストーリー仕立てで構成してあって、ぐいぐい引き込まれる。

 入社4年目、年度末の3月も目標未達成が確実な営業マンの五十嵐卓也が、退職願を懐にして社長室のドアをくぐるところから物語はスタートする。退職願はすんなりと受理されると思っていたが、社長の反応は予想外なものだった。「この退職願、3か月だけ私に預からせていただけないか」というのだ。

 4月1日、鈴木翔太という人物が新任所長として赴任してきた。二日酔いの頭を抱えながら、五十嵐は所長に挨拶しようと、近づいた。すると、鈴木所長は、「五十嵐卓也さんですね」とフルネームで呼びかけてきた。そのことに驚いたが、もっとびっくりしたのは、「挨拶をやり直してください」と命令されたことだ。それも玄関ロビーからやり直せというのだ。「私にではなく、みんなへの『おはよう』の挨拶です」。五十嵐は、ふて腐れた顔で、しぶしぶやり直した。ここから鈴木所長との二人三脚が始まった。

 「営業マンは、仕事なんか頑張っちゃいけないんです」。かけがえのない時間は自分の大切なものを守るためにこそ使うべき──。販売のテクニックだけでなく、五十嵐は鈴木所長に人として大切なことを教わってきた。

 物語は意外な結末で幕を閉じる。思わず涙がこぼれそうになった。ビジネス書に、これほど感情移入したのは初めてだ。(仁多)


『至高の営業』
杉山大二郎 著
幻冬舎 刊(1400円+税)