BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『すばらしき特殊特許の世界』

2014/03/27 15:27

週刊BCN 2014年03月24日vol.1523掲載

特許とはかくもユニーク

 「特殊特許」とは、著者の造語。出願中を含む国内の特許のうち、特許権者が一般人でないものや「あの会社がこれを?」というもの、技術の内容や解釈が普通ではないもの、権利の範囲が普通ではないものなどを指す。本書には、これら特許とは縁もゆかりもなさそうな人物が権利をもつ特許や、常識で考えれば不可能だろうという発明、それゆえに特許拒絶になった事例があまた登場する。できるだけ、当事者に取材を試みているのが好ましい。

 例えば、「夫婦が別れることのない指輪」(権利消滅)は、いったんは「進歩性がない」と拒絶されたものの、「デザインの中に見える二つのパーツの合体は、支え合って『家庭という“輪”を不動のものにしよう』と男女に決意させる重要なコンセプトであり、結婚指輪ならではのものである」と記した意見書によって認定されたという。このほか、上昇気流を防ぐことで台風を消滅させる特許(権利消滅)や、縄文人(系)と弥生人(系)という日本人の二重構造論をもとにした結婚情報システム(権利存続)など、ユニークな事例が満載。アップルとサムスン電子の争いや、越後製菓とサトウ食品工業の“切り餅裁判”という現在進行形の特許裁判にも言及する。

 基本的にはお気楽な読み物だが、こうした変わり種の事例を通して、特許とはどのような考え方の下に定められた制度なのか、ビジネスの成長にどのように貢献しているのか、実際の運用はどうなっているのかなど、特許にまつわる常識を学ぶことができる一冊だ。(叢虎)


『すばらしき特殊特許の世界』
稲森 謙太郎 著
太田出版 刊(1600円+税)
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