BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『グローバリズムという病』

2014/08/21 15:27

週刊BCN 2014年08月11日vol.1542掲載

グローバル化とは似て非なるもの

 グローバリゼーション(グローバル化)は、文明の歴史では必然のもの。近・現代の世界は、インターネットの登場を待つまでもなく、グローバル化してきた。いや、グローバル化の端緒は、人類の歴史が始まったときにあったのだろう。ローマ帝国や中国宋朝、モンゴル帝国などは、それを国家として具現化してきた。科学技術の発展によって、世界はいまも確実に小さくなりつつある。しかし、グローバリズムは違う。1990年代以降、新自由主義として、自由貿易、市場経済、規制緩和などを旗印に、「アメリカが世界に広めたイデオロギー」だ。

 1999年、東京で会社を経営していた著者は、米カリフォルニア州サンノゼで仲間とともに日米の起業家たちを支援するプロジェクトを立ち上げた。しかし、シリコンバレーのITバブルはミレニアムをまたいで間もなく弾け、「モノをつくって、市場をう回して、利潤を獲得するという実物の市場経済とは別の、金利差や、為替変動や、プロパガンダによって利潤を獲得するという金融技術」に対して、著者は疑問を抱く。考察は、グローバリズムを必要としたアメリカの多国籍企業、それを経済戦争として日本に仕かけた国家に及び、その結果として生まれた現在の日本社会を浮かび上がらせる。

 著者は、グローバル化は否定しない。「うまくつき合っていかねばならないものであり、ときには必要不可欠であり、ときには毒にもなる」ものとして扱っている。グローバル化がなぜ起きたのか、グローバリズムとは何なのかを俯瞰し、日本の立ち位置を考える好著。(叢虎)


『グローバリズムという病』
平川克美 著
東洋経済新報社 刊(1500円+税)
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