BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『誰も調べなかった日本文化史』

2014/10/23 15:27

週刊BCN 2014年10月20日vol.1551掲載

アイロニーのなかに本質を語る

 3年前に刊行した本を加筆・修正、改題した一冊。著者が考えるまっとうな社会学の手法を、今度は近代日本文化史の陽のあたらない(もしくはあてる必要がほとんどない)部分に適用している。かつてフジテレビで放映していた『トリビアの泉』を思い出すが、いやいやどうして、知る必要のなさそうな事象でも、突き詰めていけば社会の本質がみえてくる。「人間の行為や文化と関連づけながら、共同生活の構造や機能、社会の変動について研究する学問」(広辞苑)である社会学の極めて原初的な姿がここにある。ただし、思いきりアイロニーが効いてはいるが。

 取り上げる事象は、謝罪会見と土下座、「先生」と呼ばれる職業、亡国論、クールビズなど11題。興味深かったのは、芸能人の結婚会見の決まり文句「笑顔が絶えない家庭」のルーツを探る「絶えないものは、なんですか」と、事実と違うことがひとり歩きする現象をみる「諸説あります。」の項。「江戸しぐさ」を完全否定していて小気味いい。そう、あれは単なるマナーです。

 資料・史料にあたるだけでなく、マイクロフィルムを回して新聞記事をあさり、大宅壮一文庫で雑誌を探すという手法は、興味のない人には「暇だなあ」と揶揄される類いのものだが、社会状況を客観的数値で正確に捉える姿勢は極めて真摯。本題に入る前の脇道でも同じことをしているのには、頭が下がる。本書でパオロ・マッツァリーノに初めて触れた方々には、ぜひさかのぼって、現代の社会学の状況を皮肉った『反社会学講座』『続・反社会学講座』から、彼の世界に没入していただきたい。(叢虎)


『誰も調べなかった日本文化史』
パオロ・マッツァリーノ 著
筑摩書房 刊(840円+税)
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