BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『スパム [spam] インターネットのダークサイド』

2016/03/10 15:27

週刊BCN 2016年03月07日vol.1619掲載

インターネットの光と影の攻防

 米国のスーパーマーケットで知人が商品を手に取って喜んでいる。見ると手には缶詰の「SPAM」。「本物のSPAMを初めて見た!」。1990年代の話である。ちょうどスパムメールが話題になり始めた頃で、日本で取り扱う店はかなり限られていた。スパムメールの「スパム」は、SPAMが語源とされる。メーカーとしては迷惑な話だろうが、SPAMをグローバルブランドに育てるきっかけになったことは間違いない。ちなみに、スパムメールの場合は、小文字で「spam」と表記することになっている。

 ところで、スパムメールについて、迷惑メール程度だと思っていないだろうか。それで正しいともいえるが、本書では最終章で次のようにスパムメールを定義している。「スパムとは情報テクノロジー基盤を利用して、現に集積している人間の注目を搾取することである」。これだけでは意味がわからないが、スパムメールの歴史を紐解くと意図するところがみえてくる。

 そこで本書は、スパムメールの歴史を三章に分けて紹介している。第一章はインターネット以前の1971年から94年まで、第二章はインターネットが一般に普及し始める95年からドットコムバブルの2003年まで、第三章はスパムメールを法律ではなくフィルタリングなどのテクノロジーで抑え込もうとする動きが始まった2003年から現在までという構成である。

 もともとは学位論文として書き始めたということで、やや読み進めにくい文章だが、ネットワークの歴史を把握するための資料として活用できる。(亭)


『スパム [spam] インターネットのダークサイド』
フィン・ブラントン 著
松浦俊輔 訳
河出書房新社 刊(2400円+税)
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