BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『2030年のIoT』

2016/04/07 15:27

週刊BCN 2016年04月04日vol.1623掲載

IoTは地方創生を加速する!?

 タイトルに騙されてしまった。2030年にIoTがどうなっているのかを紹介する本だと思い、内容をよく確認せずに購入してしまった。本書は2015年に発行されているので、15年先を予言しているのかと思うではないか。10年先でさえ予想できないIT業界において、なかなか意欲的だと感心して購入したのに、IoTの現状を解説しているだけだった。

 「はじめに」に「現在から2030年の未来を見据え」とあるので、著者に悪気はないのかもしれないが、タイトルにある2030年のIoTを感じるところはなかった。あえて挙げるとすれば、IoTは普及に時間がかかるというところ。現時点で想定されるIoTの世界が、2030年頃に普及するということを伝えたかったのかもしれない。そうだとしても、タイトルに騙された感はぬぐえない。

 タイトルはひどいが、本書の内容はIoTの現状をしっかり捉えている。産業別の動向、技術動向、そしてビジネスモデルについて章を分けて紹介しているため、関心領域を探しやすく、読み進めやすい。

 本書で興味深かったのは、「IoTとこれまでのICT市場との相違」のところ。そこでは、これまでを“牧場モデル”、IoTを“動物園モデル”としている。多様性が高い動物園モデルでは、儲かりにくいとみえがちで、牧場モデルで大成功した企業には難しいという。また、IoTは第一次産業や工場での活用が期待されるため、IoTビジネスは地方型としているところも興味深い。2030年では、地方の中小ITベンダーが大成功しているのかもしれない。(亭)


『2030年のIoT』
桑津浩太郎 著
東洋経済新報社 刊(1800円+税)
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