BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『最後の執権北条守時』

2016/09/21 15:27

週刊BCN 2016年09月12日vol.1644掲載

鎌倉へと歴史散策の旅に出る前に

 自分の名字のルーツは何か。どのような家柄だったのか。あるとき、ふと気になることがある。ましてや、人に“珍しい”といわれる名字であれば、一度はルーツを調べてみる価値があるだろう。

 本書の著者は、名字が「守時」。鎌倉幕府の最後の執権、北条守時の末裔とされる。なんとも調べがいのある名字ではないか。そこで、自身のルーツをたどるべく、北条家とゆかりの寺を調べてまとめている。

 北条守時は、初代執権である時政の孫、重時を祖とし、極楽寺流と呼ばれる家系の嫡流である。幕府の公文書に連判する連署を務めることのできた格式の高い家柄であった。ただ、北条守時が第十六代執権となった時期は、まさに幕末。後醍醐天皇による倒幕運動に敗れ、子の益時とともに自刃し、最後の執権ということになってしまう。

 著者は、岡山県備前市の出身。北条守時とのつながりは本書をお読みいただくとして、「守時」の名字は明治の「平民苗字必称義務令」からとのこと。一族の北条守時への想いが、明治時代まで残ったというわけだ。

 本書は時守家の調査がきかっけとはいえ、鎌倉幕府の始まりから北条守時に至るまでを簡潔にまとめているため、執権の仕組みや当時の人間関係を把握しやすい。時守家でなくとも、楽しく読み進めることができる。北条家ゆかりの寺についての情報も豊富なため、鎌倉へと歴史散策の旅に出かける前に一読しておくと、景色が変わって見えるに違いない。(亭)

『最後の執権北条守時』
守時光暉 著
文芸社 刊(1400円+税)
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