個人向け・中小企業向けのバックアップソフトで知られるアクロニス。そのCEOを務める、ロシア出身のセルゲイ・ベロウゾフ氏は不思議な魅力をもった人です。何度かインタビューする機会があったのですが、当たり障りのない質問にはあまり感情を出さず端的な表現で答え、一見、ちょっと感情を読みにくいようなところがあります。しかし、話題がストレージの未来や、今注目しているテクノロジーに移ると、不敵な笑みを浮かべながらさまざまな角度でビジョンを語ってくれる、いかにも天才技術者というオーラをまとった事業家です。
そのベロウゾフCEOが、積極的な開発投資を行っていると話すのがブロックチェーン技術。ブロックチェーンというと金融業界で応用の可能性が模索されていますが、バックアップソフトにどのような関連があるのでしょうか。ベロウゾフCEOに聞くと、テーブルの上にあったコーヒーカップを持ち上げ、「落としても絶対に壊れないカップがあったらどう思います? 『何だ、そんなもの』と言う人は多いでしょうが、『いくらお金を払ってもいいから絶対にほしい』という人もいると思いますよ」と、問答のような話を始めました。
「絶対に壊れない」が意味するところは、ブロックチェーン技術を応用した改ざん検知機能でした。紙やフィルムへの記録と異なり、デジタルデータは書き換えの履歴を追跡するのが困難です。別途ログデータを残しておいても、そのログが真正であることを何らかの方法で証明する必要があります。アクロニスでは、ストレージソフトにブロックチェーン技術を採り入れることで、保存したデータに改ざんが加えられたかどうかを確認する機能を搭載しました。ベロウゾフCEOは「残されたデータがオリジナルかどうかを100年後でも確認できる」と語り、“永遠のデータ”を実現できるストレージの普及に熱を上げている様子でした。(日高彰)
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アクロニス データ保護基盤をパートナーに提供 ブロックチェーンも導入 メールマガジン「Daily BCN Bizline 2016.11.16」より