BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ゲームが教える世界の論点』

2023/02/17 09:00

週刊BCN 2023年02月13日vol.1957掲載

ゲームは人を変える

 現在、ゲーム産業は急速に成長している。2021年に開催された東京五輪の開会式で、有名ゲームの音楽が使われたことが印象的であるように、日本の顔といっていい産業である。

 世代を問わず楽しまれるゲームであるが、本書が主張するのは「ゲームは政治に影響する」ということだ。大げさな主張のような気もするが、いまやゲームはコミュニケーション手段の一つであり、コミュニティの形成などを通して人々の行動に影響を与えるメディアでもある。

 記者は難しいことを考えずに昔から楽しんでいるが、ゲームという体験を通して「楽しかった」という感想以上のものを受け取っているのだろう。キャラクターにどういう行動をとらせるかなど、ゲームをする上では必要な判断が多い。そういった要因からゲームはただ作品を眺めるだけのアニメや漫画と違い、プレイヤーが物語に没入しやすいメディアだと言える。そう考えれば、自分の考え方や価値観がゲームを通して育まれていてもおかしくない。

 では、ゲームを通して人はどう変わるのか。本書は具体的な作品をいくつか挙げながら、ジェンダーや新自由主義、陰謀論など、さまざまな考えのもと行動する人の背後に、ゲームの影響を分析してみせる。(石)
 


『ゲームが教える世界の論点』
藤田直哉 著
集英社 刊 990円(税込)
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