長期的な視座で対策を
2025年にニュースを騒がせた話題の一つがクマに関する報道だ。人身被害も相次ぐ中、クマとの向き合い方が問題となった。本書は人間とクマの適度な距離感とは何か、なぜ人間とクマの共存の均衡が崩れたのか、そもそもクマの生態とは何か、といった疑問に科学的な見知から答えようとしたものである。
25年にクマの出没が相次いだ要因の一つに、秋の主食の一つであるドングリの凶作がある。「ナラ枯れ」と言われる病原菌を原因にドングリを実らせるナラの木の枯死現象が深刻化したことから、食料を求めたクマが市街地まで現れた。一方で著者は、それだけでは警戒心の強いクマが人里近くまで出没するに至った本質的な課題は理解できないとする。
クマの生息域は、ここ数十年で見ると拡大傾向にあった。その背景には農山村の過疎化や放置される土地の増加といった、人間側の環境への向き合い方の変化が無視できないというのが著者の見立てだ。こうした長期的な要因も25年の甚大な被害につながったとしている。
クマに対しては、単なる目先の対処法だけではなく、長い視野を持った関わり方を模索することが重要になりそうだ。(石)
『クマは都心に現れるのか?』
小池伸介 著
扶桑社 刊 1100円(税込)