店頭流通

店頭で「企業を狙え!」 法人向けに動く販売店

2002/01/14 16:51

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

 店頭での法人向けビジネスが拡大している。ラオックス ザ・コンピュータ館の法人向けカウンターの設置などに加え、コジマがソリマチと提携し、会計ソフトの販売を開始。ヤマダ電機もサイボウズと提携し情報化支援サービスを開始するなど、郊外店でも法人をターゲットにしたビジネスが増加している。パソコンの販売不振で、各店とも前年割れは必至の状況だけに、収益性の高い法人向け製品の販売を増やすことで、売り上げのマイナスをカバーする狙いだ。しかし、見積もりから実際の受注までのリードタイムなど、店頭には馴染みがない部分も少なくない。店頭での法人向けビジネスの現状を追った。

 「パソコンも家電の1つとして販売する」ことにこだわってきたコジマが、FAXとコピーの複合機などの小規模法人向け商品の数を大型店を中心に増やしている。

 昨年12月19日にはソリマチと提携。コジマの提供するADSLサービスを利用し、ブロードバンドでサポートを行いながら会計ソフトを個人事業者向けに販売する。コジマでは個人事業所市場を、「当社のパソコン購入者の中にはホームビジネス用にパソコンを購入している人が少なくない。これは新しいマーケットであり、成長分野」(小島章利専務)と見て、ビジネスを注力していくことを決定している。

 店頭でビジネス向け販売を行うケースはこれまでにもあったが、都心部に店舗をもつ店が中心だった。郊外店を展開するコジマがこの分野に参入してきた背景には、パソコン販売の不振が影響していると見られる。単体よりも売価が高い新市場向け製品を販売することで、収益アップを図る狙いだ。

 しかし、法人向けビジネスを立ち上げるのは、甘くない。スタートして即売り上げが急増するケースはきわめて希だ。

 「顧客に浸透するまでに、まだ少し時間がかかるのでは」──。昨年、10月26日にSOHO向けにリニューアルオープンしたラオックス ザ・コンピュータ館だが、5階に設けられたビジネスIT支援フロアに関しては、長い目で見て評価を下していく意向でいる。

 「ザ・コンピュータ館がオープンした時も定着までには時間がかかった。今回は法人向けということで、余分に時間がかかるのでは」というのが社内の意見だ。

 同店は、リニューアル前も、25%の顧客が領収書をもらって買い物をするほど法人顧客が多かった。しかし、サーバーやネットワークのシステム売りとなると勝手が違う部分も少なくない。見積りを出しても相手が複数の業者に見積り依頼を出すことや、商談決定までのリードタイムなどは、個人をターゲットとしてきた店頭販売にはなかったものだ。こうした「異文化」にどれだけ早く慣れるかがカギになる。

 ザ・コンピュータ館のリニューアルに協力しているソフトバンク・コマースの宇陀栄次社長は、前職の日本IBM時代の経験も踏まえて、「聞いただけでは理解できない商品も、実際に現物を見ることで理解できるようになる。そのような場として、店がもつ意味はやはり大きい」と話す。

 ヤマダ電機とサイボウズの提携は、その場で商品を売っていくことよりも、商品を紹介することが狙い。ビジネス向け商品に関しては、メーカーとタイアップすることで、店頭で商品を紹介することも1つのビジネスとなる可能性を秘めている。

 法人ビジネス成功には、これまでの既成概念に縛られず、新しい店作り、販売方法を取り入れていくことが必要となりそうだ。
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