店頭流通

記録型DVD、“関ヶ原前夜!”

2002/06/24 16:51

週刊BCN 2002年06月24日vol.946掲載

 「記録型DVD市場は、関ヶ原合戦の前夜」――。BCN本紙が主催した「DVD+RW/+R座談会」で、リコーの坂巻資敏執行役員はこんな見解を示した。記録型DVDは、昨年から急成長を始め、今年も絶好調を維持している。しかし、3つの方式が対立しており、各グループとも多数派工作に全力を挙げている。その様子が「関ヶ原前夜」に似ているというわけだ。どの方式が市場を制するかは、ソニー次第とも言われている。

勝敗のカギを握るソニー

 BCNランキングによれば、記録型DVDの1-5月累計の前年同期比伸び率は、台数が280.7%、金額が257.9%。全周辺機器のなかで最高の伸びを示している。

 方式別のシェアは図の通りで、1度だけ書き込みのできる+R機能をもった新製品を4月に投入したリコー陣営が急伸。4月、5月とDVD+RW/+Rがトップを占めた。 記録型DVDの規格策定団体としては「DVDフォーラム」があり、DVD-R、DVD-RW、DVD-RAMと3つの規格を決めている。幹事会社は17社で、世界で219社(今年1月時点)が加盟している。

 ただ、パイオニアなど-RW推進陣営は、2000年5月に「RWPP I(RW Pro ducts Pro motion Ini tiative)」を12社で結成。今年4月段階で47社が加盟するなど、もう1つの勢力を築いている。 一方、DVDフォーラムとは別の規格策定団体として、+RW/+Rを推進するグループは「DVD+RWアライアンス」を結成、コアメンバーはリコーなど8社、加盟メンバーは58社(同4月時点)。

 このように各団体が多数派工作を展開しているが、ドライブを製品化しているのは松下電器産業(DVD-RAM/R)、パイオニア(DVD-R/RW)、リコー(DVD+RW/+R)の3社のみ。製品化に踏み切るメーカーが少ないのは、製造が技術的に難しいという点に加えて、どの規格が主流になるのか各社とも“様子見”を決め込んでいるためと見られる。

 各方式には強み、弱みがある。例えば急速に台頭している+RW/+Rには、強力な民生系メーカーが少なく、一方の-RW陣営には強力なパソコン系メーカーが少ない。AV(音響・映像)とパソコンをつなぐのに最も適したフォーマットというのは各陣営とも最も強調するところだが、+RW、-RW双方とも体制的にはどちらかに偏っているという弱点がある。

 DVD-RAMの場合、RAMメディアは既存のDVD-ROMでは読み出せないのが弱点。その対策として、RAM読み出し機能を搭載したDVD-ROMドライブの販売に力を入れているが、普及の足取りは鈍いとも言われる。

 各陣営ともこのような弱点を抱えているなか、ソニーの出方次第で一気に決着がつくとの見方が浮上している。

 ソニーは、DVD+RWアライアンスのコアメンバーだが、民生部隊は-RWをパイオニアから購入しているなど、態度が揺れている。ライセンスビジネスの“うまみ”を熟知しているはずの同社だが、CD-R/RWではダブルデンシティ(倍密度)、DVDでは3GBで独走するなど“迷走”気味。これが3規格対立の大きな背景ともなっている。

 ソニー社内には、4.7GBは捨て20GBの次世代光ディスク規格「ブルーレイ」に走ろうとするブルーレイ派、メモリースティックで光ディスクそのものを駆逐できると考えるメモリースティック派もいるといわれる。

 もっとも、現実的には4.7GBは向こう数年間はうまみのあるビジネスになる可能性が増しているだけに、ソニーとしても近く態度決定を迫られると見られている。デュアル方式なのか、既存のどれかを選ぶのか。とくに、+RW陣営と-RW陣営にとっては、ソニーの決断待ちの日々がしばらくは続きそうである。
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