店頭流通

パソコン専門店、家電量販店 BTOメーカーに変貌

2004/04/19 16:51

週刊BCN 2004年04月19日vol.1036掲載

 パソコン専門店や家電量販店などがBTO(注文生産)パソコンメーカーへと変貌を遂げようとしている。何の用途でパソコンを購入するのか?──、以前に比べてパソコンに対するユーザーの用途が明確になりつつあるなか、ユーザーニーズにきめ細かく応えたパソコンを提供することで利益拡大につなげる狙いだ。もちろん、デルのダイレクトモデルに象徴される低価格化の流れに対抗するためでもある。コモディティ(日用品)化するパソコンで利益を稼ぎ出すうえで、販売店のBTOメーカー化は今後一段と拍車がかかりそうだ。

大手のダイレクトモデルに対抗

 組立パソコンを開発し、自社ショップで販売するビジネススタイルで名高いのは、パソコン工房を運営するアロシステム。店舗やサイトを窓口に、ユーザーニーズに合致したパソコンを組み立てるスタイルで、パソコン上級者を中心に顧客を獲得している。

 同社は、主要都市の電気街をはじめ、駅前や郊外など幅広い地域で出店。「最近では、郊外店で高齢者やファミリー層など、パソコンに詳しくないユーザーへの販売に取り組んでいる」(平田英明・九州ブロック部長)。

 電気街や駅前でパソコンマニアや上級者層をユーザーに取り込む一方で、新規ユーザーの開拓を本格化させている。「パソコン初心者が一番必要としているのはサポート。当社では、組み立てた店員が販売、サポートまでを行うため、トラブルが発生した時はすぐに対応できる」(同)と、初心者をターゲットに地域密着型の店舗を目指している。

 ヤマダ電機は、個人や官公庁向けに組立パソコンを販売するフロンティア神代を子会社化し、低価格パソコンの拡販体制を整えた。

 フロンティア神代から調達するオリジナルモデルのラインアップを増やし、「個人に加え、SOHOなどの法人需要も増やしていく」(田原稔・法人事業部東京営業所主任)方針だ。

 ヤマダ電機では、法人ビジネスで今年度(2005年3月期)1000億円の売上高を見込む。法人ビジネスの核になるのは、「ハード機器ではパソコン。組立パソコンは、顧客ニーズに合った機能を低価格で提供できる。法人顧客を獲得するカギになる」(同)と強調する。

 パソコン専門店のピーシーデポコーポレーションは、新ブランドのBTOパソコン「オッジオ」を4月下旬から発売する。

 店頭でコンサルティングから注文、製造、受け渡し、メンテナンスまでを手がける「店頭ダイレクトBTO」と呼ばれるビジネスモデルを構築。野島隆久社長は、「ウェブによるダイレクト販売やホワイトボックスによるBTOパソコンなど、それぞれのビジネスモデルの良い点をできるだけ取り入れた」と自信をみせる。価格競争力や在庫削減、オペレーションコスト低減などがメリットだ。

 このほか、BTOパソコンではないものの、ソフマップの「牛丼パソコン」や「バーガーパソコン」、エイデンの「エッグ」、さくらやの「新宿パソコン」など、販売店がショップブランドのオリジナルパソコンを販売する傾向も加速している。

 各社がこうしたビジネスに着手するのは、ユーザーがパソコンを購入する決め手が“価格の安さ”にあり、そのなかで利益を確保するにはオリジナルモデルの方が優位にあるからだ。また、デルを筆頭にメーカーのウェブによるダイレクト販売が広がっていることで、こうしたBTOパソコンで対抗する狙いもある。

 ユーザーニーズに合ったパソコンを提供できるという点で、今後も販売店がBTOパソコンビジネスを手がけるケースはさらに増えていきそうだ。
  • 1