店頭流通

パソコン販売 各社、巻き返しに必死

2004/09/27 16:51

週刊BCN 2004年09月27日vol.1057掲載

 この夏商戦でデジタルAV(音響・映像)機器の後塵を拝したパソコンメーカー各社が、年末商戦に向けての拡販に必死だ。BCNランキングによれば、6月から8月にかけてのパソコン販売台数は、デスクトップパソコン、ノートパソコンともに前年同月を10─20%程度割り込む結果に終わった。夏商戦の不振を挽回するため、各社は10─12月に向け、AV機能をさらに充実させたパソコンに活路を見い出そうと、夏モデル以上にラインアップを充実させた。一方、夏商戦の主役となった薄型テレビやDVDレコーダーなどのデジタルAV機器は、年末商戦も引き続き好調の見込みで、パソコン陣営には厳しい環境が続きそうだ。

夏商戦の前年割れを取り戻す

photo 夏商戦が幕を閉じ、主要パソコンメーカーは年末商戦に向けた新モデルを相次ぎ発表し始めた。年末商戦における製品の強化ポイントは、夏に引き続き、テレビチューナーなどのAV機能を充実させた点にある。しかも、夏商戦の反省を踏まえ、各社ともAV機能の強化とどまらず、搭載モデルのラインアップを増やし、多様化するコンシューマニーズを捉えようとしている。

 10-12月に向け各社は、「前年同期以上の実績を達成する」(富士通の田中博美・パーソナルマーケティング統括部コンシューマPC推進部長)、「前年同期比30%増を目指す」(東芝の長嶋忠浩・PC第一事業部PCマーケティング部長)など、確実に前年同期を上回ることが当面の目標だ。

 メーカー各社が拡販に躍起になるのは、今年の夏商戦が「予想以上に厳しかった」(大手メーカー)ためだ。

 BCNランキングによると、パソコンの販売台数は夏商戦幕開けの6月がデスクトップパソコンで前年同月比17%減、ノートパソコンで同18%減。夏のボーナス商戦真っ只中の7月がデスクトップで同23%減、ノートで同14%減。夏商戦終盤の8月がデスクトップで同19%減、ノートで同9%減と苦戦を強いられた。日本電気大型店協会(NEBA)の調べでも、会員企業によるパソコンの販売実績は、7月が前年同月比17%減の10万6669台という結果だ。

 こうした状況に対し、パソコン専門店や家電量販店の間からは、「中古パソコンの販売は堅調に伸びたが、新品については落ち込んだ」(ソフマップ)、「お客さんがAV機能を搭載したパソコンに魅力を感じなかった。映像需要は、薄型テレビやDVDレコーダーに向かった」(ベスト電器)、「夏商戦モデルが目新しい機能を搭載していたわけではなかったため、買い控えが起こった」(コジマ)と、AV機能に活路を求めるメーカーとの温度差を指摘する声が挙がる。「粗利率の点からも、パソコンを販売するメリットが見い出せない」と漏らすショップ関係者もいるほどだ。

 一方、薄型テレビやDVDレコーダーなどのデジタルAV機器の夏商戦は、アナログからデジタルへの移行という市場環境と、アテネ五輪による映像ニーズの高まりが相まって好調に推移。NEBAによれば、7月は薄型テレビを含むテレビの販売が23万3855台(前年同月比3%増)と堅調に増加し、DVDレコーダーなどDVD関連機器は6月に17万5747台(同73%増)と大幅な伸びを示した。

 年末商戦も、映像ニーズへの高まりからデジタルAV機器の販売が好調に推移する可能性が高い。ショップサイドには、「今年の冬はデジタル家電の比重を高める」、「AV機器コーナーの増床を図る」などといった声が多い。

 パソコンメーカーにとっては夏商戦が厳しい状況だっただけに、年末商戦向けモデルがほぼ出揃う10月以降、昨年以上の拡販を図らなければ、コンシューマ向けパソコンビジネスは先細ってしまうばかり。この年末商戦でデジタルAV機器と張り合うためには、AV機能搭載パソコンならではのメリットをいかにユーザーにアピールできるかが拡販のカギといえよう。
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