拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>8.デジタルカメラ(下)

2004/10/25 16:51

週刊BCN 2004年10月25日vol.1061掲載

 成熟期を迎えつつあるデジタルカメラ市場において、その参入プレーヤーは台湾・中国メーカーを含め、増加の一途をたどっており、デジカメメーカーの競争環境は激化するばかりである。(岸本 章 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 現在、市場で上位を占めるメーカーの大半は日本メーカーであるが、それらは大きく3つのグループに分類される。まずは銀塩カメラメーカー時代からの老舗で光学系にも強みを持つキヤノン、オリンパス、ニコン、コニカミノルタ、ペンタックス。そして感剤メーカー出身である富士写真フイルム、コニカミノルタ、最後が家電メーカーのソニー、三洋電機、カシオ計算機、松下電器産業である。

 競争環境が激化するデジカメ市場において、競争優位性を保ち、高い利益率を確保するために必要な戦略はいくつか考えられる。1つは、製造コストの削減である。価格下落が激しいこの業界においては、製造プロセスの効率化を図るとともに、工場自体を中国に移管することによる人件費の削減などは当然必要な戦略である。それに加えて、日本メーカーは中国や台湾のOEM(相手先ブランドによる生産)メーカーを積極的に活用することも1つの選択肢かも知れない。事実、米国のイーストマンコダックは、ローエンド製品に限っては台湾メーカーのOEM供給を受けているのが現状である。

 もう1つの戦略は、いわゆる「バリューチェーンの拡大」である。現在、高い収益性を保っているソニーやキヤノンは、いずれも自社でキーデバイスであるCCDやCMOSなどの撮像素子を内製化している。このようにデジカメメーカーにとって、キーデバイスを内製化することは今後、収益を最大化していくうえで重要となろう。

 このようなキーデバイスの内製化によるバリューチェーンの川上進出だけでなく、サービス領域への川下進出も重要である。サービス領域とは、たとえば、DPE事業への進出や、ホームプリンティングビジネスとして、プリンタ販売とのシナジーを生み出すようなビジネスモデルである。このような川下領域への進出により成功しているのは、キヤノンである。いずれにしても、今後、デジカメのセット単体でのビジネスモデルには早晩、限界が訪れ、各メーカーはバリューチェーンの裾野を広げることにより、ビジネスモデルの再構築を迫られることになろう。その中でシナジーを最大化する戦略をとれたメーカーが、長期的な勝ち組として君臨することになるであろう。
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