秋葉原物語

<秋葉原物語>[第1部 ポテンシャル]1.2005年を意識

2004/11/01 16:51

週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載

 秋葉原が変わろうとしている。東京都、千代田区の再開発計画を中心に、最先端のIT都市づくりが本格化している。2005年秋には、「つくばエキスプレス」の開業、再開発地区へのヨドバシカメラの進出など電気街は新たな姿を見せる。時代の活況を映し、ラジオからテレビへ、オーディオからパソコンへと主役が代わり、さらに情報タウンへと変わっていく姿をこれから1年にわたって見つめていく。

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 「2005年を意識しています」──。最近、秋葉原の店舗を取材すると、かならずこの言葉が飛び出す。秋葉原駅周辺にあった神田市場や旧国鉄貨物駅などの跡地の再開発プロジェクト「秋葉原クロスフィールド」によって、秋葉原ダイビル、秋葉原UDXといった大規模ビルが周囲を圧倒して完成していく。ここに入居してくる企業、大学などをターゲットとしたビジネスがスタートしている。

 それほど大きなインパクトのある秋葉原再開発計画「秋葉原まちづくりガイドライン」を東京都が発表したのは01年3月。すでにそれ以前、92年から都市高速鉄道つくば線(つくばエキスプレス)の建設がスタートするなど、秋葉原再開発に向けた動きは着々と進んでいた。

 00年12月には「東京構想2000」として、東京の産業を活性化していくうえで、情報通信などの成長産業の育成が重要であり、そのため都市づくりと連携しながら産業の集積を図っていくことの重要性が指摘された。その中で秋葉原地区は、電気街が持つ魅力や世界的知名度に支えられた集客力を活用し、コンテンツ創造産業やIT関連産業の集積を促進していくことにより、高付加価値なビジネス市場を創造するとともに、IT関連産業の世界的な拠点の形成を目指すとの方向性が示された。

 それを受けて作られた秋葉原まちづくりガイドラインによって再開発地区売却のための公募が行われ、秋葉原は品川、六本木、汐留といった地区と共に大規模な再開発に向けて動き出したのだ。

 秋葉原地区のまちづくりのコンセプトとして、IT関連企業の集積地を作ることを決定した背景を、大野誠・東京都都市整備局都市づくり政策部開発プロジェクト推進室開発調整担当係長は、「秋葉原はIT産業の集積拠点となるポテンシャルをもった街。しかも知名度があり、外国人は新宿を知らなくとも秋葉原を知っている。電気街があり、秋葉原に行かなければ手に入らないものがある街となっているから」と指摘する。

 今、電気街に新たな方向性を与えようとしている秋葉原再開発のコンセプトは、他でもない電気街が生み出したものでもあるのだ。(三浦優子)
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