拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>13.家庭用ゲーム機(下)

2004/11/29 16:51

週刊BCN 2004年11月29日vol.1066掲載

 プレイステーション・ポータブル(PSP)の登場により、携帯型ゲーム機市場においても、かつて据置型ゲーム機で起こったような競争が、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)対任天堂を軸に、2004年末から起きようとしていると見ることができる。(小林孝嗣 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 そこで、携帯型ゲーム機の今後の動向を考える上での視点を整理すると、以下のような3点が挙げられる。

(1)他の携帯型再生機器との競争

(2)携帯型ゲーム機同士の競争

(3)携帯電話との競争

 (1)については、特にPSPの将来動向に関わってくる。例えばPSPは、音楽再生端末のiPod mini(アイポッド・ミニ)と比べ面積2.7倍、体積4.9倍、重量2.6倍にもなり、明らかに大きくて重たいという事実がある。

 また、iPodとは異なり、HDD(ハードディスクドライブ)非搭載であるため、自分のポータブル音楽ライブラリといった使い方はできないなどのデメリットもある。一方で、映像再生という点では、ポータブルDVDよりは小さく、電車の中で立ったままソフトの視聴も可能だ。このように、他の端末に比べてメリット、デメリットがあるなかで、ゲームおよび音楽、映像のソフトのラインアップ拡充を中心にしながら、どこまでゲーム以外の端末として普及していくかがカギになる。

 (2)についてはこれまで見た通り、PSPとニンテンドー・DS(NDS)の目指す方向性が、かなり異なっていることもあり、今後の展開を見通すのは、現段階では個人的には難しい。ただ、NDSの仕様を駆使したゲームは、PSPでは実現できないのは事実である。NDSの特性にあったゲームソフトを任天堂だけでなく、各ゲームメーカーも投入していくことができれば、価格面などからいって、NDSはある程度の普及が見込めると思われる。

 (3)に関しては、当然ながらこれらの携帯型ゲーム機は、携帯電話とも、コンテンツ再生端末としての競合が強くなる可能性が高い。もちろん、スペックの差異によるコンテンツの質の差というのは当面あるものの、そのアドバンテージは、徐々に小さくなっていく可能性はある。

 インターネットへの接続性では、携帯電話の方が現状ではやりやすい点や、いつでもどこでも持ち歩いている(ユビキタス性)という面で、携帯電話にも優位性があり、どちらが主役になるかでは予断を許さない。

 とはいえ、以上のような課題はありつつも、2004年末から携帯型ゲーム機を中心に、携帯コンテンツ再生端末間の位置づけに変化が起き、その時、ユーザーがどんな端末を選択していくかが、今後注目されよう。
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