拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>15.高機能携帯電話(上)

2004/12/13 16:51

週刊BCN 2004年12月13日vol.1068掲載

 携帯電話の機能は向上の一途をたどっている。メガピクセルカメラはいうに及ばず、テレビ、ラジオ、動画や音楽の再生、パソコンと連携可能なスケジューラ、各種の辞書、Bluetoothによる通信、タッチパネル、フルブラウザ搭載、ワードやエクセルファイルの閲覧など、もはや小型のパソコンといっても過言ではないほどの性能を備えた端末が、次々と市場へ投入されている。(田中大輔 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 何よりも、PDA(携帯情報端末)+通信モジュールという組み合わせよりも遙かに安価に、それと同等の機能を持ったツールが手に入るのである。

 かつて、PDAはビジネスマンの必携アイテムともてはやされた。しかしその市場は伸び悩んだままであり、国内の出荷台数は100万台に届かない。機能面についても、携帯電話に追いつかれてしまった感がある。

 したがって、PDAにとっては、今後よほど大きなブレークスルーがない限り、市場拡大は困難であろう。

 たとえば、以前ソニーが「クリエ」の上位機種にFeliCa(フェリカ)リーダを搭載して話題になったこともあったが、今ではFeliCaそのものが携帯電話に搭載されてしまった。欧州では、キーボードを搭載した携帯電話端末も複数のモデルが発売されている。また韓国では、ハードディスク搭載端末が発表されている。

 ノキアやモトローラは、これまでもPDA的位置づけの高機能端末(欧米では「スマートフォン」と呼ばれる)を欧米市場に投入してきているが、今年になって日本でも第3世代携帯電話向けに端末を提供し始めた。今後の日本市場における海外メーカーの動きが注目される。

 最近では、デザインをより重視した携帯電話端末が発表されるようになってきたが、しかしその一方で、ビジネスでの利用を意識した端末も登場している。携帯電話キャリアにとっても、「1人1台」が現実のものとなり、今後の新規利用者の獲得が難しくなってきている。そんななかで、法人契約も含めたビジネス利用の拡大に目を向けてきている。

 法人契約数は、最も多いNTTドコモでも全契約数の10%に満たないといわれており、まだ市場拡大の余地が残っているともいえる。この市場をターゲットとして、パソコンとの連携や社内システムとの連携を重視した端末は今後確実に増加するだろう。

 一方で、これはPDAがターゲットとしていたセグメントでもあり、携帯電話が同じ轍を踏むことになるのか、あるいは携帯電話ならば市場を獲得できるのか、注目に値する。
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