拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>17.携帯音楽・映像プレーヤー(上)

2005/01/03 16:51

週刊BCN 2005年01月03日vol.1070掲載

 ソニーのウォークマンに始まる携帯音楽プレーヤー市場の主役は、カセットテープ、CD・MDを経て、HDD(ハードディスクドライブ)に移りつつある。(守岡太郎 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 現在、HDDプレーヤーの代表的存在である米アップルコンピュータの「iPod(アイポッド)」は、2001年10月の発売以降、順調に売り上げを伸ばしており、04年秋に発売された「iPod mini(アイポッドミニ)」と合わせると、日本国内だけでも累計数十万台が出荷されている。

 HDDプレーヤーが携帯音楽プレーヤー市場に占めるシェアは約10%とまだ大きくはないが、比較的低価格帯のシリーズの売れ行きが好調であることから、今後製品単価が低下するにつれてCD・MDプレーヤーのシェアに食い込んでいくものと考えられる。

 HDDプレーヤーを接続できるモデルが車載AV(音響・映像)システムやカーナビに登場し始めたことからも、HDDプレーヤーへの市場の期待がうかがわれる。

 HDDプレーヤーの最大の特徴は、数千曲を記録できるその記憶容量にある。これはほとんどの場合、ユーザーが保有する音楽ライブラリすべてを携帯可能にする規模である。格納する楽曲数が増えれば増えるほど、その分類・抽出機能にも工夫が要求されることは言うまでもない。

 各メーカーはパソコンからプレーヤーに曲を転送する管理ソフトの機能やインターフェイスの仕様にさまざまな工夫をこらしている。代表的な製品はいくつかあるが、多機能ながら操作をシンプルにとどめた機種は特にユーザーの高い評価を受けている。

 このHDDプレーヤーの競合製品として注目されるのは、音楽再生機能を持つ携帯電話である。

 auではこの機能を持たせた特定機種に対する音楽配信サービス「着うたフル」を04年11月から開始しており、その好調な滑り出しを受けてNTTドコモも音楽再生機能の採用を発表している。

 一方で、携帯電話に搭載するHDDの開発も進んでいるが、多機能化・軽量化という条件を満たすうえでバッテリー容量が障害になっている。昨今ではリチウムイオンバッテリーの改良に限界が見え始め、燃料電池の登場が待たれているが、当面は現行のバッテリーで実現できる範囲での機能拡充に力が注がれる見込みである。

 バッテリー面の課題がクリアされるまでは、HDDプレーヤーが音楽ライブラリーを携帯するというスタイルの軸となるであろう。
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