大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>52.三洋電機新体制の真価は9月に判明

2007/06/11 18:44

週刊BCN 2007年06月11日vol.1190掲載

 大手電機メーカーの最後として、三洋電機の2006年度連結決算が5月28日に発表された。

 売上高は前年比7.6%減の2兆2154億円、当期純損失は453億円と3期連続の最終赤字となったものの、営業利益は前年の171億円の赤字から黒字転換して495億円を計上した。昨年11月の公表値に比べて、営業利益は146億円も増加しており、「正直なところ、考えていなかった数字」(三洋電機・前田孝一副社長)と、経営陣にとっても予想外の利益水準となった。

 4月に社長に就任したばかりの佐野精一郎社長も、「前社長を中心とした構造改革をやり遂げ、営業利益を中心に一定の成果を達成している」と、自己評価する。

■唯一の成長株はデジカメ

 だが、手放しで喜ぶわけにはいかない。

 売り上げの半分を占めるコンシューマ部門では、依然として赤字脱却ができないままだ。携帯電話事業での減収や、海外向けデジタルカメラのOEM事業の不振なども重くのしかかる。

 「デジカメ事業は、3月以降、需要が上向いており、秋に向けた受注は順調。07年度は黒字を目指す」(前田副社長)として、同売上高で37.6%増の1740億円という大幅な成長を目指す。だが、前年比31.8%減となった06年度実績をカバーする規模にとどまるとの見方もある。

 さらに、会計処理の問題や、リチウムイオン電池の品質問題といった課題も見逃せない。

 07年度の見通しは、連結売上高が前年比0.7%増の2兆2300億円とほぼ横ばい。さらに、本業での儲けを示す営業利益で、9.2%減の450億円と減益を見込んでいることも課題といえよう。

 主力となるコンシューマ部門の売上高見通しは0.6%増の1兆162億円と若干増加するものの、主要コンシューマ製品では、電話機が7.0%減の3165億円、テレビが9.2%減の954億円、冷蔵庫が4.9%減の540億円、エアコンが0.6%減の521億円、洗濯機は4.2%減の315億円と、軒並みマイナス成長。唯一、前年比37.6%増のデジタルカメラの伸びだけが際立つ格好になっている。06年度の営業利益確保に貢献した米国のテレビ事業、欧州のエアコン事業、太陽電池のほか、需要が旺盛なノートPC向けのリチウムイオン電池をはじめとする二次電池や、光ピックアップなどの電子部品の収益増が期待されるが、いずれも価格下落と厳しい国際競争、そして原材料高の渦中にある。

■要注目の中期経営計画

 新社長体制での構造改革費用の積み増しがあれば、07年度200億円の最終黒字計画の達成は、かなり厳しいと言わざるを得ないだろう。

 佐野社長は、「最大のポイントは、連結および単独における最終黒字の達成」として、今年9月にも事業方針をまとめ、来年度からスタートする新中期経営計画の策定へと結びつける考えだ。

 「事業方針や新中期経営計画をまとめるうえで、聖域は一切ない」と佐野社長。取締役会の過半数を投資家サイドが占めるなかで、どんな事業方針が打ち出されるのか。それが打ち出される9月こそが、新社長体制の真価を推し量る最初のタイミングとなりそうだ。
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