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CCDは小型で高画素、CMOSは高速性能 ソニーの撮像素子戦略を探る

2008/09/22 18:45

週刊BCN 2008年09月22日vol.1252掲載

 デジタルカメラやデジタルビデオカメラ用の撮像素子で世界シェア60%を誇るソニー。同社は今後、どんなイメージセンサー戦略で事業を展開していくのか。半導体事業本部の上田康弘・イメージセンサ事業部長に取材した。

撮像素子「CCD」「CMOS」とは?

 デジタルカメラやビデオカメラで、被写体の映像を電気信号にする心臓部が撮像素子。大きく分けて「CCD(電荷結合素子)」と「CMOS(相補性金属酸化膜半導体)」の2種類がある。CCDは、主にコンパクトデジタルカメラやデジタルビデオカメラなどで使用されており、CMOSは、デジタル一眼レフカメラやハイビジョン対応のデジタルビデオカメラなどで多く使用されている。

 CMOSは信号の高速な読み出しが可能で消費電力も少ない。しかし、速い動きの被写体では画像が歪むことがあるほか、高感度対応が課題だ。また、一つの画素を細かくすることも難しい。一方、CCDは高速な被写体でも画像が歪むことがない。また、高画素で小型のセンサーを作りやすく、製造コストも安い。しかし信号を高速で読み出すことが難しい。 


新型CMOSで課題を解決

 上田事業部長はソニーのCCD、CMOSの開発の方向性について次のように話す。

 「CCDは、非常に小型で高画素なセンサーの開発を目指す微細化路線をとる。これは一つ一つの画素で光の利用効率を上げることで実現できると思っている。同時にノイズの発生を抑えて高感度性能も高めていく。一方CMOSは『高速な読み出し性能』でCCDとの違いを出す。われわれはCMOSセンサー上でアナログ信号をすべてデジタル信号に変換する技術を開発している。この技術を使うことで、当社のCMOSは高速読み出しと、低ノイズで高感度を実現した」 


 ソニーでは高画質で微細化もできるCMOSの開発にも取り組んでいる。「裏面照射型CMOSイメージセンサー」がそれだ。

 「『裏面照射型CMOS』では、表と裏の構造を逆にしたことで、フォトダイオードが光を集めやすくなったため、より高感度のCMOSを作ることができる。また、配線部分も自由に設計できるので、1つの画素を小さくすることも可能だ。われわれとしては微細化が課題だったCMOSで一つの回答を示すことができたと思っている。そういう意味では、近い将来には、裏面型がCMOSの主流になると考えている」

 裏面照射型CMOSは試作品が開発されたばかりで、実用化はこれから。今後はデジタルビデオカメラやデジタルカメラでの搭載を目指して製品化に取り組む計画だ。

販売先ニーズに柔軟に対応

 実はソニーが生産するCCD、CMOSは75%を他社に販売している。社内向けは25%しかない。外販が中心のビジネスでは、いかに市場のトレンドなどをつかみ供給先に売り込めるかが重要なポイントだ。この点について上田事業部長は、ソニーが“電機メーカー”であることが優位に働いていると話す。

 「当社は社内にデジカメなどの事業部がある。ここと直接話をすることで、市場の流れや求められている機能などがわかり、それをベースに外販用のセンサーを作っていくことができる。この点は大きな強みだ。また、販売先のリクエストに柔軟に対応できることも自慢だ。例えば、A社が感度を重視したデジタルカメラを開発していて、感度重視のセンサーが欲しいという要望があった場合、その仕様に合ったセンサーをカスタマイズして提供することができる」

将来的に主流はCMOSに

 ソニーではCCDとCMOSの棲み分けをどのように考えているのだろうか。 

 「例えばデジタルビデオカメラであれば、アナログ放送程度のスタンダード画質で十分というのであれば、性能が安定してコストも安いCCD、ハイビジョン画質というのであれば、大容量データの高速処理が必要になるのでCMOSということになる。デジタルカメラの場合なら、毎秒2-3枚程度の連写機能であればCCD、10枚以上が求められるのならば高速なCMOSという使われ方になる。ある時期になれば、イメージセンサーのほとんどがCMOSになるだろう。そこで、われわれとしては、CMOSの特長を生かした新しい楽しみ方を提案していきたい」

 上田事業部長はこのような構想を語ってくれた。(米山淳)


詳しくはWebサイト「BCNランキング」をご覧ください。
CCDは小型で高画素、CMOSは高速性能――ソニーの撮像素子戦略を探る
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