このコーナーでは、店頭販売に注力するメーカーの販売第一線の動きを紹介する。（前編）では各社の販売戦略や体制を、（後編）では現場の奮闘ぶりを追う。

山下博氏 家電事業部 営業統括部 東京支店 東京中央営業所

　三洋電機の民生用製品販売を担う三洋電機コンシューマエレクトロニクス。東京支店東京中央営業所は、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダ電機に加え、秋葉原に拠点をもつ店舗を管轄する。山下博氏は、ここでムービーカメラ「Xacti」をはじめとするAV機器を担当。秋葉原・新宿・吉祥寺・横浜のヨドバシカメラ4店舗を、週に3日ほどかけて巡回している。

　「Xacti」の展示では、お客様に豊富なカラーバリエーションを訴求するため、常に全色を置くことを心がけている。ブースにはモニタを置き、「Xacti」で実際に撮影した映像を流すことで、画質のよさを体感してもらう仕掛けを展開する。ここで流す映像は、実は三洋がプロモーション用につくった映像ではなく、巡回担当者が自ら「Xacti」で撮ったオリジナルの映像なのだ。その理由は、製品と利用シーンをお客様に身近に感じてもらいたいから。子どもや動物たちの愛らしい姿が、来店者に訴えかける。

　山下氏には、印象深い経験がある。09年3月、新宿のある店の店頭で販売支援に立っていたとき、イギリス出身のギタリスト、エリック・クラプトンのサポートミュージシャンの一人が、「Xacti」の「DMX－HD2000」を指名買いしたのだ。この日は、日本公演の最終日。国内だけでなく、海外での「Xacti」の知名度を肌で感じた出来事だった。

　「Xacti」は、デジタルカメラとデジタルビデオカメラ、両方の機能をもつ。その分、ジャンルの位置付けが難しい製品でもある。「使い方をイメージできていないユーザーは多い」（山下氏）。デジタルカメラと同じように手軽に撮れるカメラとして、PCとの親和性を軸に、お客様に利用シーンを伝える努力を日々重ねている。（井上真希子）