デジタルトレンド“今読み先読み”

<スマートフォン>新製品の発売ラッシュで人気 キャリア/メーカーともに事業の柱に

2011/03/24 16:51

週刊BCN 2011年03月21日vol.1375掲載

 2010年12月、携帯電話キャリアは、2011年春モデルでスマートフォンのラインアップを大幅に増強し、携帯電話販売台数構成比でスマートフォンが半数に迫るなど、急激に人気が高まった。年が明けてもその人気は続き、キャリア各社は、今年最も力を入れる端末としてスマートフォンを挙げる。今後、市場はどのように変化していくのか。

新製品発売ラッシュで販売台数構成比は40%以上に

 BCNランキングによれば、携帯電話に占めるスマートフォンの割合は、昨年12月、台数ベースで48.1%に達した。今年に入ってからも、40%以上で推移している。これは、携帯キャリアがスマートフォンの新製品を続々と発売・発表したことによる。ラインアップが揃い、選択肢が増えたことで、新規契約や機種変更でスマートフォンを選ぶ消費者が増えたのだ。


 現在のスマートフォン人気の“土壌”は、ソフトバンクモバイルのアップル製「iPhone」が築き上げたといっていい。2008年7月に日本に登場したiPhoneは、それまでビジネスユース一辺倒だったスマートフォンのイメージを、エンターテインメント性を備えたパーソナルユースに変えた。BCNランキングによれば、昨年3月まで、iPhoneのOSである「iOS」搭載機はスマートフォンのOS別販売台数構成比で80%以上を占めていた。しかしこの時期は、携帯電話市場のスマートフォンの販売台数構成比は、1月が12.4%、2月、3月が7.0%と、低い水準で推移していた。逆にいえば、他のキャリアは様子見状態で、ライバルがいなかったともいえる。

 iPhoneがスマートフォン市場を独占していた状況は、昨年4月にグーグルのオープンOS「Android」を搭載した「Xperia SO-01B」が登場したことで変化する。NTTドコモがスマートフォンの販売に力を入れ始めたのだ。これによって、スマートフォンの販売台数構成比は上昇を始め、6月末の「iPhone 4」の登場で、7月には22.6%まで伸びている。10月末、NTTドコモのサムスン電子製「GALAXY S SC-02B」の発売を契機に、スマートフォンの販売構成比は30%を超えた。そして、年末商戦には、NTTドコモが7機種、ソフトバンクモバイルが5機種を発売と、Android搭載スマートフォンが続々と登場した。出遅れていたKDDIも販売を本格化。年末商戦以降、Android搭載機が市場を席捲するようになった。

自由競争時代に突入 大きなビジネスチャンスに

 今年に入ってからも、新製品の発売・発表ラッシュは続いている。今後もスマートフォンの需要は増えていくだろう。しかも、老若男女を問わず伸びていくことが予想される。場所や時間を問わず、メールのやり取りやインターネットの閲覧ができることに加え、タッチパネル画面を指で簡単に操作できることが、これまであまりデジタル機器に触れてこなかった層を呼び込んだ。また、iPhoneで使えるアプリが世界で6万5000超、Androidも徐々に増えている。自分に適したアプリを手軽に使えるということが、人気の要因の一つになっている。さらには、おサイフケータイや赤外線通信など、携帯電話と同じように使えることで、機種変更の際の“壁”を取り払ったことも大きい。

昨年末から本格的なスマートフォン時代に突入

 このような状況から、キャリア各社はスマートフォンを2011年の事業の柱に据えている。NTTドコモの山田隆持社長は、「春は多くの携帯電話ユーザーが機種変更する商戦期。スマートフォンで若年層や女性など、新規契約をしっかりと獲得する」と鼻息が荒い。なかでも女性の買い替え促進に力を入れる考えで、3月24日発売の「Xperia arc SO-01C」には、新色として女性向けの「サクラピンク」を追加している。

 KDDIは、「来年度(11年3月期)は、製品の半数以上をスマートフォンにする」(田中孝司社長)方針だ。4月に発売する新たなスマートフォンは、高速通信回線のWiMAXを搭載した「htc EVO WiMAX ISW11HT」。田中社長は、「YouTubeやニコニコ動画が大好きでよく見るが、動画が途切れずにきれいに見ることができる。もう戻れない感覚」とアピールしている。ソフトバンクモバイルは、依然根強いiPhoneに加え、「Androidでも業界No.1を目指す」(孫正義社長)と、iPhoneとAndroid搭載機の両輪で主導権を握ろうとしている。

 スマートフォン市場は花開いた――。携帯電話キャリアによる新製品の発売は今後も続き、近く一般の携帯電話を上回る販売台数を記録するだろう。アクセサリメーカー各社でも、すでにスマートフォン特需が始まっている。

 これからの最大の注目点は、特定のSIMカード以外を利用できないようにすることで、キャリアと端末を結びつけていた「SIMロック」が解除される方向に進むこと。NTTドコモが先陣を切って動く。消費者がキャリアに縛られることなく、多くの端末のなかから好きなスマートフォンを購入できる環境が整うのだ。当初予測される制約条件も、消費者のニーズが出てくれば次第に撤廃されていくだろう。本当の意味での自由競争時代に入ったとき、携帯電話ビジネスに大きなチャンスが待ち構えている。(佐相彰彦)
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