2006年の戦略 64ビット化が進展、新時代へ「会社法」がビジネスチャンス
──「次世代への転換期」という話が出ましたね。最近の業務ソフト業界には、どんな変化が生じているのでしょうか。それに向け、06年はどんな戦略を仕掛けていくのでしょうか。
和田(OBC) 昨年末には、マイクロソフトの新データベース「SQLサーバー2005」と新統合開発環境「ビジュアルスタジオ2005」の日本語版が発表され、この2月から出荷が始まりました。今年出る予定の新OS「Vista(ヴィスタ)」を含め、64ビット化へのスタートが切られたと思います。業務ソフトは転換期を迎えながら、新時代に向かっていくと感じてますね。
それに加えて、「日本版SOX法」や国際会計基準、連結納税などの制度変更に応えるためにも、さまざまな対応が必要になります。また、ブロードバンド環境を生かした企業の生産性向上のためには、高水準のシステムが必要になる。いずれにしても、06年は新時代に向けた「スタートの年」になるでしょう。
竹之内(弥生) 今、最も注目しているのは、5月にも施行される「会社法」の影響です。「会社法」で「最低資本金規制」が改正され、会社設立が容易になるので、起業する顧客が増えます。そのため新たに法人化する企業向けに、業務ソフトをバージョンアップする必要に迫られています。こうした新興企業は、設立当初から業務ソフトを導入すると予測されるだけに、当社にとっても大きなチャンスだとみています。
田中(OSK) 弥生さんが指摘される通り、「会社法」に向けた動きは要注目ですね。さらに、08年の制度化が予定されている「日本版SOX法」などにより、セキュアなデータトランザクション処理の環境が求められます。ブロードバンド環境のなかでトランザクションが増え、06年は、サーバーなど大手ハードウェアメーカーが儲かる。IT業界全体にとって、「フォローの風」が吹いています。当社にとっても、ERPや情報系ソフト、大塚商会が販売する複写機と連携したシステムを強化する必要があります。
また、「Vista」の登場も追い風です。利用環境がビジュアルに変更されるので、新システムに大きな影響を及ぼします。ただ、その分、開発投資は増えますけどね。
原田(応研) そう、システムは性能がアップしていきますね。今後は64ビットが登場することで、上位企業のシステム導入が盛んになる。企業に残っているオフコンは、オーダーメードで作りこむ必要がありましたが、これをERPにリプレースするニーズは高まりますよ。
注目を集めている「日本版SOX法」は、財務報告に関する内部統制に加え、ITシステムに関する統制も明文化される見通しです。これひとつをとっても、上位企業にERPが入っていく要素は大きくなるでしょう。
大炊(PCA) ここ2、3年、制度改革や、OSとかハードの変更が少なく、業務ソフト市場には「追い風」がなかったですよね。それに比べて昨年は「e-文書法」が施行され、今年は「会社法」の施行が目前です。非営利法人でも「公益法人会計基準」が改正されるなど、いよいよ業務ソフトに追い風が吹いてきた。
こうした変化に対応していくのが、業務ソフトベンダーの使命だと思います。当社は「公益法人会計基準」の改正に向けた準備を終え、啓蒙活動を盛んに進めています。これにより、かなりのリプレース需要が見込めると期待しています。
ただ、「会社法」については、この制度改正で企業の貸借対照表も変更しなければならないという認識が薄く、企業側の対応にもまだまだ温度差がある。それだけに、当社にとっては、主要顧客である中小企業向けに内部統制対応に向けたトータルな話題を提供して、啓蒙や動機づけを行ってビジネスに早く結びつけることが課題です。
さらに、「日本版SOX法」対応となると、ERP単体だけでなく、ERPから内部統制に関するデータを取り出すためのシステム対応などの布石を打っていく必要があります。
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