米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOが11月上旬に来日し、中長期的な経営戦略を披露した。「イノベーション(技術革新)」をテーマに、身振り手振りを交え20分間ほど力説。そのなかで、「Windows 7」が好調なスタートを切った状況をPRするとともに、今後の経営戦略を立案するうえで柱にする重要なキーワードを口にした。一つは「3 Screens and a Cloud」。そしてもう一つが「Natural User Interface(NUI)」だ。
「3 screens and a Cloud」と「NUI」を重視
記者会見の冒頭、バルマーCEOは「Windows 7」の立ち上がりについて言及した。「イノベーションは中期的な経済成長を支えるもので、マイクロソフトはそれに大いに貢献する企業。『Windows 7』はその好例だ」と説明。そのうえで、「日本ではすでに230社もの企業が採用を決め、670モデルが出荷されている。発売日から10日間の売上高は他のOSよりもはるかに高い。搭載PCの売り上げは対前年比20%増で推移している。『Windows 7』搭載PCが出荷された時がCEOになって最も嬉しかったこと」と満足している様子をみせた。

スティーブ・バルマーCEO そのうえで、今後のキーワードとして新たに二つのキーワードを掲げた。それが、「3 Screens and a Cloud」と「Natural User Interface(NUI)」である。
「3 Screens and a Cloud」は、バルマーCEOが「今年になって頻繁に口にするようになった」(マイクロソフト広報)というキーワードだ。「3 Screens」とは、PC/携帯電話/テレビを指し、「Cloud」はクラウド・コンピューティングを意味する。一方、「Natural User Interface(NUI)」は、マウスやキーボードではなく、音声やモニタのタッチ操作でコンピュータ利用できる新たな入力デバイス・方法を指す。PCだけでなく携帯電話とテレビも加えたことに、マイクロソフトが携帯電話とテレビをPCと同等の入力デバイスとして重視している姿勢がみてとれる。
「テレビに向かって友達の名前を呼ぶと携帯電話で会話できる。テレビ画面に映ったゴルフボールを指差すだけで、ゴルフボールメーカーを検索できるようになる」(バルマーCEO)。三つのデバイスが連携し、インターネット経由でコンテンツやサービスを自由に利用できる世界。その世界をバルマー氏は将来像として描き、マイクロソフトがその実現をけん引する存在であることを訴えた。
「マイクロソフトは、将来に向けて95億ドルの資金を研究開発に投じている。これほどの投資を研究開発に費やしている会社はほかにない」と話し、先端技術の開発にコミットする姿勢を鮮明に示した。
バルマーCEOは、終始イノベーションに通じるようなコメントを口にし、マイクロソフトが技術的優位性を維持し続けている企業であることを主張した。グーグルやアマゾン、セールスフォースなどが迫っている現状を払拭したいという思いが垣間見える内容だった。(木村剛士)