ドイツでアンチウイルスソフトのシェアNo.1を誇るベンダー、アビラ(チャーク・アウアーバッハCEO)が日本市場に本格参入した。日本法人を設置し、またアジアに研究施設、開発拠点を置くことで、アジア地域での戦略を強化する。コンシューマ向けでは日本語版によって今後さらなるシェアを獲得する一方、法人向けではすでにパートナーと連携し、多くの導入実績をもつなど、土台を固めている。
コンシューマ向けを足がかりに法人攻略
 |
| チャーク・アウアーバッハCEO |
これまでアビラは欧州を中心に展開してきており、ドイツ国内ではトップシェアを誇るという。製品の提供方法は主にダウンロードからということもあり、知る人ぞ知るといった印象があるベンダーだが、日本では個人ユーザー75万人が英語版を使っているという実績をもっている。アビラは12月1日付で日本法人を設立した。来年度第2四半期以降は、ウイルス解析機関のウイルスラボや、開発センターをアジアに設置する予定で、この地域での戦略を強化する計画だ。コンシューマ向けには、自社のウェブサイト上から、無償版「Avira AntiVir Personal−FREE Antivirus」と、無償版に機能を追加した有償版「Avira AntiVir Premium」、上位製品の「Avira Premium Security Suite」の3製品をダウンロード販売する。
チャーク・アウアーバッハCEOは「国内すべてのデスクトップに導入を狙いたい」と意気込んでいる。無償で導入ユーザーを増やすとともに、有償版へのアップグレードパスを築く戦略だ。法人向けはコンシューマ向けのプレゼンスを高めた後で本格参入を目指すという。
法人向けについては、日本国内では実は5年前からプロマーク社がパートナーとなり、アビラのエンジンを採用し、「Proscan アンチウイルス(プロスキャン)」という商品名で展開。現在、中小・中堅、教育機関や、また、IBMのメインフレーム向けの独自ソフトウェアの提供で、地方自治体や、金融機関などあわせて約1000社程度に導入するという着実な地盤固めを行っていた。
プロマークは、今年の8月からはPromarkアンチウイルスに加えてアビラの「Avira AntiVir」の取り扱いを開始し、Windows向けのセキュリティ製品を販売している。
これまでにも数多くのベンダーが日本に参入している。だが、日本はトップ3のシェアが大きく変動することのない成熟市場。パンダセキュリティのほか、キングソフトなども無償でセキュリティソフトを提供しており、問題はそのビジネスモデルでシェアの切り崩しができるかどうかだ。
また、法人向けでも、大手ベンダーがシェアを占める状況は変わらない。一方、エフセキュアのようにLinux向けソフトウェアの提供や、カスペルスキーのようにOEMでの市場参入など、独自の戦略で成長を遂げる企業も存在する。 アビラが今後既存のパートナーと連携しながらどのような戦略でさらなる拡販を目指すのか、力の見せ所だ。(鍋島蓉子)