富士通系有力SIerである富士通ビジネスシステム(FJB、鈴木國明会長兼社長)が、グループ挙げての組織再編で苦境に立たされている。2009年5月、親会社の富士通が中堅企業向け事業をFJBに移管することを発表、同年10月1日からその体制で動き出す計画だったが、未だ新体制に移行できていない。鈴木会長兼社長は、「頓挫したわけでは決してないが、時間がかかる話」と説明。移行への明確なスケジュールは現在も決まっていない。FJBが新体制に移行できずに悩んでいるネックポイントとは何なのか?
一筋縄ではいかないアライアンス内容
 |
| 鈴木國明会長兼社長 |
富士通は2009年5月21日、国内中堅企業向けビジネスを拡大させる目的で、FJBを完全子会社化し、FJBに同分野の事業を集約させることを発表した。業種や地域を問わず、中堅企業向け事業のノウハウを蓄積した子会社をもつことで、SMBビジネス拡大を図ろうと考えたわけだ。
具体的な施策はこうだ。(1)営業、(2)商品企画、(3)パートナーとの連携・協業機能をFJBに一本化──。営業は東名阪地区から順次FJBへの一本化を進め、商品企画では中堅企業向けERP「GLOVIA smart」をFJBに移管する計画を示した。一方、パートナーとの連携・協業では、パートナーが従来富士通と連携していた体制を見直し、FJBがパートナーの窓口となる体制に変更する。新体制への移行時期は、当初計画では2009年10月1日。今から約4か月前だ。しかし、鈴木会長兼社長に対し、本紙編集部が昨年12月末に行ったインタビューによれば、その時点で新体制に移行できていないことが判明した。
ネックになっているのが、3施策の一つであるパートナーとの連携だ。鈴木会長兼社長はこう語っている。「営業と商品企画の移管は、スムーズに話が進んでいる。現時点でも移管しようと思えば、難なくできる。問題はパートナーとの協業体制だ。地域やパートナーが手がけているビジネスによって協業体制はさまざまで、個別に協業のあり方を検討する必要がある。パートナーごとに話し合うことが求められているため、時間がかかっている」。
また、鈴木会長兼社長はこうも語っている。「パートナーの一部からは、『これまで富士通と協業してきたのに、なぜFJBと連携しなければならないのか』という指摘も出ている。それはもっともな話で、そうした声に対して一つひとつ説明している最中」。突然、体制変更を突き付けられたパートナーが反発しており、それが新体制移行への足かせになっているわけだ。
鈴木会長兼社長は、「あくまでも三つの施策を同時にやる」方針で、営業と商品企画機能の移管を手がけ、その後に販売パートナーとの連携を進める考えはもっていない。現在、スケジュールを変更し、来年度(2011年3月期)期首に新体制への移行を完了させる計画で準備を進めているが、「パートナーとの協業体制については、2~3年はかかるかもしれない」とも漏らしている。
親会社が描いた青写真を現場で仕切る子会社の苦悩……。抱えるパートナー企業が多く、それぞれがもつ強みや富士通グループに求めている協業内容もさまざまであるだけに、FJBの苦悩はまだ続きそうだ。(木村剛士)