東芝は、中国のコンシューマ向けノートパソコン市場でシェア10%超を目指す。中国市場のパソコン需要は急速に伸びており、2010年のコンシューマ向けノートパソコンは昨年の1500万台から2000万台規模に拡大するとみられている。上海市に拠点を構える現地法人の東芝PC&ネットワーク上海社では、向こう数年のスパンで、東芝製パソコンを取り扱う中国内の販売店数を直近の2000店舗から3000店舗へと拡大させることでシェア倍増を図る。
市場急拡大、店舗網の整備急ぐ
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| 諫山浩司副総経理 |
経済発展に伴い、中国のコンシューマ向けノートパソコン市場は急成長している。国内の個人向けノートパソコンの出荷台数は500万台弱であることを考えると、中国の市場規模は2009年時点で日本の約3倍、2010年には約4倍に増える計算になる。上海万博の開催などで活気づく中国の市場では、「月によっては前年同月比100%増に近いときもある」(東芝PC&ネットワーク上海社の諫山浩司副総経理)と、驚きを隠さない。
それだけに競争も激しい。ノートパソコン分野で競合するメーカーは、ざっと30社。ブランド別にみると、地元メーカー最大手のLenovoが台数シェア約25%とトップに位置する。次いで約20%のHP、約10%のASUS、約8%のDELLと、米国や台湾ベンダーが個人向けノートパソコンで強みを発揮している。日本ベンダーでみると、この分野でまとまったシェアをもつのは東芝とソニーで、ともに約5~6%で推移している。市場が拡大しているため、シェアを維持するだけでも実出荷台数は右肩上がりで伸びる。だが、東芝では向こう数年で「シェア10%超への拡大に挑戦する」(諫山副総経理)構えだ。
ポイントは販売網の整備にある。東芝は中国の主要15都市に拠点を置き、地域の販売店の開拓に力を入れる。中国では、日本のように大型量販店が主導権を握る流通形態とは異なり、小規模なパソコンショップがショッピングモールのテナントとして店を構える“秋葉原ラジオ会館方式”が主流。「先進諸国の市場のように、いずれ大型量販店が主流になる」との日米欧主要メーカーの予想に反し、中国では依然として販売量のおよそ8割が“ラジ館”方式で占められている。「ここ数年、このトレンドは大きく変わっていない」(諫山副総経理)。大型量販店の本部と直接商談し、全国一律の販売施策を打つ“本部商談”が成り立ちにくいのが、中国流通網の特徴の一つである。
東芝では、主要都市に展開した拠点を通じてラジ館式ショップや有力量販店とのパイプを強化。自社製品の取り扱い販売店数を1.5倍に増やすことでシェア拡大につなげる。同時に、今はまだ十分にシェアが取れていない法人系ノートパソコン市場の進出にも取り組む。HPやDELLなどの外資系は、法人系に強く、この領域での知名度の高さを個人市場でも生かす。シェアアップには、個人・法人の両方での事業拡大が欠かせない要素となりそうだ。(安藤章司)