日本IBM(橋本孝之社長)は、Lotus事業で中堅・中小企業(SMB)需要の掘り起こしに乗り出している。電子メール、カレンダー、掲示板などのコラボレーション機能やファイル共有機能のほか、オフィススイートのLotus Symphony、ファイアウォール機能などをパッケージ化したアプライアンス「Lotus Foundations」を軸に全国規模での販売網の構築を進めており、今年度(2010年12月期)中に47都道府県すべてに最低でも一つの販社を配置。セミナーの全国行脚やトレーニング強化を図っていく方針だ。これによって、社内のコミュニケーション向上が果たせる製品・サービスとして位置づけられる「コラボレーション」の分野で国内トップを目指す。
日本IBMが「Lotus Foundations」で販社を獲得した地域は、47都道府県のうち現段階で19。伊藤瑞穂・ソフトウェア事業Lotus事業部パートナー営業部長は、「1地域あたり1社というわけではなく、複数社を販売パートナーを確保したケースが多い」という。具体的な販社数については明らかにしていないものの、「前年と比べて10倍以上に増えている。しかも、各地域で有力なSIerとパートナーシップを結んだ」としている。拡販する体制を敷くため、「今年度中には、1都道府県に最低でも1社は販売パートナーが存在するという、全国規模の販売網を構築する」と自信をみせている。
販社との協業関係を深めていくため、支援に力を注ぐ。機能や売り方などを理解できるように、販社から求められた製品に絞って説明する「早わかり&深わかりセミナー」を実施。なかでも、「Lotus Foundations」に関する説明会開催の要望は多かったようだ。各地域で販社やユーザー企業を対象としたセミナーも展開しており、これまで東京をはじめ大阪や名古屋、金沢などで開催。近く札幌や福岡などでも行う予定だ。また、実機を体験できる場も用意し、触って疑問が生じたことに対して技術者に質問できるようにしている。
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| 伊藤瑞穂部長 |
「Lotus Foundations」を軸にした支援策を打ち、できる限り多くの販社を全国にわたって確保する。そのうえで開拓していくのはSMB市場だ。「300人以下を対象にLotusを浸透させる」としている。Lotus製品は多くの企業がユーザーとなり、市場を席巻していた時期があった。今でも一定のシェアを維持してはいるものの、全盛期のような勢いはない。現状は、グーグルやサイボウズ、マイクロソフトなど、競合とのシェア争いが続いている。それだけでなく、多くのメーカーが製品やサービスの拡大を図ろうとしているなかで、Lotusを積極的に売ろうとしている販社が減少していることは否めない。そんななか、SMBに焦点をあてた「Lotus Foundations」で再びユーザー企業の確保に動く。地場SIerなどとパートナーシップを深め、何としてでも新規開拓を図っていく。これによって、SMB向け事業の拡大に向けて次のステージに進むことを見据えているのだ。
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クラウド事業の拡大を視野に
日本IBMがLotus製品で中堅・中小企業(SMB)市場の開拓に力を入れるのは、次のステップとしてクラウド時代での主導権掌握を見据えているからだ。
同社は、すでにクラウドサービスとして「LotusLive」を提供して、SMBの掘り起こしを図っている。今年1月には、ウェブ会議機能「Meetings」とソーシャル・ネットワーク機能を搭載した「Connections」を組み合わせた「Engage」の提供を開始。伊藤瑞穂・Lotus事業部パートナー営業部長は、「ウェブ会議やソーシャル・ネットワーク機能のなかのファイル共有などで徐々に需要が高まってはいる」とアピールするものの、「まだまだクラウドサービスに対するユーザーのニーズが旺盛とはいえない」と認める。そのため、販社とのパートナーシップを深耕し、クラウドサービス面でも販社に対する支援を強化する。
具体的には、6月末までにメールやスケジュール機能などを搭載した「iNotes」のデモ・検証用のアカウントを販社に対して無償で提供。実際に社内で活用してもらうことで、販社がユーザー企業に対して多角的に提案することを期待している。加えて、「LotusLive」のAPIを公開。販社が自社アプリケーションを組み合わせて、「LotusLive」が売れる仕組みを構築することが狙いだ。
また、東京や大阪、名古屋などの主要な15程度の販社を集めてラウンド・テーブルを4月に実施。ビジネス拡大に向けたアクションプランを策定するためだ。「クラウド時代を、どうビジネスに結びつけるかということがテーマだった」という。
ベンダー各社がクラウドサービスの提供し始めているなか、徐々に導入事例が出てきてはいるものの、まだまだクラウドサービスが普及するには時間がかかりそうだ。そこで同社では、アプライアンスといったこれまで馴染みの深い製品で導入を促進。多くのSMBをユーザー企業として獲得し、クラウドサービスへの移行も促すというわけだ。(佐相彰彦)