富士通は7月9日、経営方針説明会を開き、山本正已社長が今年度および来年度の方針・戦略を説明した。今年度(2011年3月期)の連結業績目標は売上高が4兆8000億円で、営業利益は1850億円。売上高は2.6%増だが、営業利益は約2倍に引き上げる計画で、かなり挑戦的だ。利益計画の中身をみると──。
 |
| 山本正已社長。会見では「野副(州旦元社長)さんのことで経営に悪影響は出ていない」とも話した |
表には、事業セグメント別でみた営業利益の昨年度実績および今年度計画を示した。4セグメントのうち、PCや携帯電話開発・販売などの「ユビキタスプロダクトソリューション」は唯一の減益計画で、半導体などの「デバイスソリューション」は赤字からのV字回復を目指す。そして、最も売り上げ金額を増加させるのが「サービス」で、最も営業利益率の伸び率が高いのが「システムプラットフォーム」になる。主要セグメントのなかでも、この「サービス」と「システムプラットフォーム」が、2倍の利益計画のカギを握りそうだ。
サービス部門ではクラウドがポイントになる。「プライベートクラウドで攻めの提案」(山本社長)を本格化させる。先に発表した米マイクロソフトとのグローバルレベルでの戦略提携も、この方針の一環だ。クラウド関連の研究開発と設備投資額を昨年度に比べて350億円積み増して1000億円にし、「クラウド・スペシャリスト」と呼ばれる人員を11年度末までに5000人育成する計画。投資も惜しまず攻勢に出る。この分野で、まずは国内需要を的確に捉えられるかどうかが焦点だ。
一方、システムプラットフォームでカギになるのが、全社的な方針に掲げるグローバル市場での拡販である。IAサーバーでは、全世界で昨年度25万台だった販売台数を、今年度40万台に増加させるほか、ストレージ、ネットワーク機器の世界での販売も加速させる方針を山本社長は示した。この領域は、サービス部門に比べて国内市場での成長の伸びしろが少ない。そうなると、他事業セグメントよりもグローバルで早期に拡販できるかどうかがカギになる。IAサーバーの今年度販売計画40万台の内訳として、国内では前年度比5万台増の15万台、海外では10万台増の25万台に設定している点からも、このことが読み取れる。
いずれの事業に関しても、計画に対する達成の可能性は未知数だ。クラウドに関しては、それに特化した売上高目標も利益計画も示されていない。ただ、「緻密に計画を立てるタイプ」(富士通子会社社長の評)の山本社長が決めた計画が大きく的を外れるとも思えない。事実、売上高目標については2.6%増と業界水準並みと慎重だ。元社長が進めてきた利益増加のための構造改革に手応えを感じているとも受け取れる。(木村剛士)