日立電子サービス(日立電サ、百瀬次生社長)は7月下旬、保守サービス会社としては異例の発表を行った。「Make IT Simple」のブランドで展開するソリューションがそれで、日立製作所製以外のハード・ソフト合計11製品に保守サービスを付加して提供するという内容だ。保守サービス会社で、親会社以外の保守サービス対応を大々的に謳うケースは、親会社を含めグループ企業が競合製品を保有していることなどから、極めて稀。そんな慣習を打破しても、日立電サは新たなブランドをつくり、他社製品のサポートサービスの体系化に踏み切った。
「Make IT Simple」では、日立電サがユーザー企業の窓口となり、ハード、ソフトを問わず、メーカーも関係なくすべての問い合わせに応じ、保守・修理サービスを提供する。まずは9社、11製品をサポートする(右表)。今後、順次メニューを増やし、今年度(2011年3月期)末までには、サポート対象を30製品まで増強する計画だ。
この新ソリューションは、保守サービス会社のサービスメニューとして、今までなかったのが不思議なくらいのソリューションだ。ユーザー企業が運用する情報システムは、単独1社の製品で構成されているわけではない。ユーザー企業にしてみれば、どこのメーカーのハード、ソフトが故障したかを問わず、情報システム全体をサポートしてくれるITベンダーが欲しいと考えるのは当然だ。その相手として、コンピュータの保守・修理でつき合いがある保守サービス会社を選ぶケースも多いからだ。
しかしながら、日立電サの広報によれば、「これまで一つの製品に対してサポートサービスを提供する発表をしたことはあるが、ここまで複数製品を一挙にサポートし、ブランドもつくったのは初めて」だそうだ。日立電サに限らず、競合他社でもこうしたマルチベンダー対応のサポートサービスを、大々的に発表した例はあまり聞いたことがない。それには、事情がある。
保守サービス会社は、これまでもグループ会社以外の保守サービスを提供していないわけではない。陰ではグループ会社以外の製品のサポートビジネスを各社とも手がけている。ただ、メーカーのグループ企業の1社としてみれば、競合製品のサポートサービスを取り扱うことになり、大々的にPRすることはできない苦しい事情がある。そんななかでも、日立電サは今回、「Make IT Simple」の発表にこぎ着けたわけだ。この発表で、日立電サはワンストップのサポートサービス提供を大々的に謳うことになり、競合他社に比べてユーザー企業への訴求力を高めたといっていい。
オープンな技術を採用するサーバーが主役になり、ハード単価が落ちている現在、保守サービスビジネスを取り巻く環境には厳しいものがある。以前のように、親会社のハードだけをサポートすればビジネスが成り立つ時代は終わった。事業を維持するためには、マルチベンダー対応は必須の戦略。日立電サは他社に先行してその体制を整えたのだ。(木村剛士)