【上海発】サイボウズ上海(山本裕次代表)が、9月に発売するグループウェアの新製品「ガルーン」で中国市場に攻勢をかける。まずは従業員300人以上の大手日系企業を開拓し、2012年をめどに、導入企業数を現在の約100社から200社へと拡大する方針だ。さらに、かつて一度挫折している地場企業へのアプローチに再挑戦し、中国での長期的な成功の礎を築く。

サイボウズ上海が入居するオフィスビルから眺めた上海市街
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| 増田導彦副総経理 |
サイボウズは、2007年に上海に中国現地法人、サイボウズ上海を設立し、中国での拡販に乗り出した。当初1年間は、現地に進出している日系の中小企業をターゲットに据え営業。これらの企業のIT担当者が日本にいるケースが多く、直接コンタクトできないなど、さまざまな壁にぶつかったが、グループウェアのニーズは必ずあるとして営業活動に取り組んだ。増田導彦副総経理は、「電話でアポイントを取り、出かけて行って丁寧に商品説明をするといった地道な活動の繰り返しが実を結んだ。リーマン・ショック以降も、導入企業は増え続けている」と語る。
一方で、08年には地場企業にも着目。こちらは、増田副総経理が「まず無料版でアプローチしたが、まったく手応えがなかった。まだ早かった」と語るように、ハードルの高さを痛感する結果に終わった。中国企業にはITに費用をかける意識が薄いことや、情報を自分だけの財産とし、共有したがらない企業文化があることを要因に挙げている。
そして今年9月から、サイボウズ上海はパッケージ版の新製品「ガルーン」を武器に、2年間で日系の導入企業を倍増させるという大幅な事業拡大を目標に掲げる。第一の柱は日系企業だ。これまでの中小企業に加え、300人以上の従業員を抱える大手日系企業を狙っていく。現在、販売代理店となっている日系の4社との連携を強化するなどの施策で、導入企業数を現在の約100社から200社へと伸ばす。事業拡大の第二の柱に据えるのが、かつて挫折した地場企業への再挑戦だ。過去の失敗から学んで、今回は営業方法を中国の事情に合わせ、製品の訴求ポイントも地場企業のニーズに沿ったものにしていく。
例えば営業方法では、「中国では電話でのやり取りだけではなかなかキーパーソンと会うことができないので、直接紹介してもらえるように人脈の強化を図る」(増田副総経理)。また訴求ポイントは、地場企業での情報共有のニーズが低いことを踏まえ、プロジェクト管理やToDoリスト管理など、急速な事業拡大で業務管理の改善に迫られている地場企業に役立つ機能を前面に押し出していく。「製品の見せ方を少し変えて、導入にメリットを感じさせる」(増田副総経理)という作戦だ。
失敗を成功の糧とできるか──中国の地方市場への進出も含めて、地場企業の顧客化が長期的な成功のカギを握るといえそうだ。(ゼンフ ミシャ)