アンチウイルスの市場は飽和状態――。となれば、他社のシェアを奪うしかない。「過激な戦略をとる必要がある」と話すのは、エフセキュア コーポレート営業本部の斉藤雅美本部長だ。シェア獲得のために、ヒト、モノ、金を投じてライバルを凌駕する競争力をパートナーに提供していこうというのがエフセキュアの戦略だ。
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| 斉藤雅美本部長 |
企業の間では、仮想化によるサーバー統合などが進んでいる。大手セキュリティベンダーのような全方位的なビジネスを展開したのでは、エフセキュアに勝ち目はない。同社は仮想化、サービスプロバイダ向けの「オペレータ事業」といわれるSaaSビジネスにフォーカスし、推進していく。この方向性のなかで、パートナーのためになることなら、価格やライセンス形態などを迅速に変えて提供することも可能だという。「当社は小規模であるがゆえに小回りがきき、機動力がある。パートナーごとにカスタマイズした手厚いサポートを提供することができる」と斉藤本部長は優位点を語る。エフセキュアのワールドワイドの売り上げのうちの半分がリセラービジネス、半分がオペレータビジネスだ。リセラービジネスのうち、20%超の売り上げを日本で稼いでいるからこそ、フィンランド本社を動かすほどの発言力をもっているのだという。
仮想化のセキュリティ商材は今後の成長の一翼を担う事業だが、これまでエフセキュアが業績を伸ばしてきたのはSaaSである。日本ではマカフィーが先駆的に中小企業向けのSaaSを開始しているが、エフセキュアもかなり早い段階でスタートさせている。従来は、地域のISP(インタネットサービスプロバイダ)にSaaSを提供する戦略を進めていたが、ここにきて、KDDIやエキサイトなど大手のキャリア、プロバイダを攻略している。セキュリティメーカーの競合も、自社でのSaaS提供を開始している。
仮想化やSaaS、エフセキュアがフォーカスしている分野は、他社にとってもホットな分野だ。たとえ価格の叩き合いになって、最終的には負けても、それで競合他社の売り上げを減らすことができる。「シェアを獲得するためには、価格の叩き合いでもやらなければならない」と断言する。
自社提供のSaaSは先行グループ、そして仮想化はこれから伸ばしていく市場。とくにこれからフォーカスする仮想化では、ライセンス体系も分かりやすくしたことで運用管理の容易さをアピールしていく。メーカーとしての地位を確立していくために、エフセキュアは大攻勢をかけているのだ。
エフセキュアをはじめ、アンチウイルスのなかでも後発に位置づけられているメーカーは、価格戦略に訴えるところも多い。製品の質もすぐれていると自負するエフセキュア。価格も重要だが、「安かろう」と勘違いされては意味がない。「製品力」をいかに伝えていくかが肝になる。(鍋島蓉子)