テクノサイエンスジャパン(佐藤廣社長)は、ピー・シー・エー(PCA)のERP(統合基幹業務システム)「PCA Dream21」の導入を決断した。2007年当時は株式公開(IPO)を目指しており、社内業務をExcelで管理することにはすでに限界を感じていた。新しく導入したERPの本稼働までの期間は、システム環境の構築を始めた08年10月からの6か月間。普通は1年かけて取り組む案件だが、短期間で成功に導くことができた。
ユーザー企業:テクノサイエンスジャパン
電子・電磁波計測機器の輸入販売やソフトウェア開発、メンテナンスなどを手がける。電子機器から出る不要な電磁波ノイズを防止し、電磁波を受けても本来の機能を確保するEMC(電磁共存性)環境の構築を目指している。
プロダクト提供会社:ピー・シー・エー(PCA)
プロダクト名:中堅・中小企業向けERP「PCA Dream21」
「PCA Dream21」のシステム全体図
テクノサイエンスジャパン(佐藤廣社長)は、電子・電磁波計測機器の輸入販売やソフトウェア開発、メンテナンスなどを手がける。東京本社のほか、大阪と名古屋の拠点を含めた全社のシステム統合を目指し、社内プロジェクトを立ち上げたのは2007年だった。08年10月にシステム環境の構築を始めてから本格稼働開始まで6か月という短期間で、「PCA Dream21」の導入に成功した。
「既存のパッケージは機能が不十分だった」。テクノサイエンスジャパンの津田和郎・管理部長は不満を打ち明ける。ほとんどの書類をExcelで管理することを強いられており、同社の取引形態に対応できていなかったからだ。「各部品の仕入れの時期はバラバラ」(津田部長)で、完成してから原価に振り替える。仕掛品は1案件(JOB)あたり20~30にのぼり、在庫は膨大な量となる。完成までには部品管理や人件費、経費管理なども必要だった。株式公開(IPO)を目指していたので、内部統制の視点も求められていた。
「Dream21」導入の決め手となったのは、価格と機能、導入期間だ。売り上げや入金、仕入情報を自動的に仕訳データに連携する機能を標準で搭載している。PCAにとっては、「通常は本稼働までに1年を要する。それを半年でこなした」(宇野照夫・Dream21事業部システム営業課係長)という事例だった。販売管理だけならまだしも、財務管理との連携が要件としてはずせなかった。外貨管理の見直しなどもあった。なるべくカスタマイズを少なくして、Excelのインターフェースをできるだけ維持したのが成功につながったという。システム構築を手がけた富士テレコムの高木健吾・第三営業統括部ソリューション営業部第一営業課担当課長は「データベース(DB)化とJOB管理が最初の課題だった」と振り返る。

(左から)津田氏、高木氏、宇野氏
まず着手したのは、営業担当者が外出先でもExcelを利用して見積書を作ることができる仕組みの構築だった。ただ、そこで浮上したのが「誰がマスターのメンテナンスを行うのか」(宇野係長)という問題である。この解決策として、例えば経理担当者の承認を受けたうえで得意先を登録し、システムに反映するようにした。また、案件ごとの収益管理で抱えていた数値の正確性という問題の改善策として、最終的な情報を発注指示書にまとめることで、原価や収支管理、進捗管理ができるようにした。
津田部長が「経理作業が半減した」という外貨管理は、従来は輸入時の外貨換算を手集計のレート変換で実施していた。月間10時間以上の工数がかかっていたという。「Dream21」の商品マスター管理用ツールを別途作成し、為替レート管理や為替差損益などの自動計算が可能となった。このほか、製品受払表や掛取引の管理表を追加。仕掛から完成まで、案件を一括で売掛計上し、同じタイミングで仕入一括計上する仕組みもアドオン開発で補った。
今後は、ビジネスインテリジェンス(BI)製品の活用や資金繰り管理、キャッシュフロー計算書を見直し、トレーサビリティなど、より経営戦略の視点に立ったIT活用に意欲的な姿勢をみせる。(信澤健太)

EM TEST製サージシジェネレータ。擬似的に雷を発生させる(写真左)。
PRANA製RFランプ。アンテナと組み合わせて電磁波を放射する
3つのpoint
・既存のExcelインターフェースを踏襲
・業種特化の部分をアドオン開発
・導入まで半年間というスピード感