その他
日本法人中国拠点のIT部門を知れ
2010/12/09 21:07
週刊BCN 2010年12月06日vol.1361掲載
11月中旬に上海を訪れた。中国に足を運んだのは12年ぶりで、当時は、日本の国道並みの広い道路がまだ砂利道、その道をわがもの顔で走っていたのは無数の自転車だったことを覚えている。久しぶりに視察したその土地に、当時の面影はなく、東京と同じ建物を備えた近代都市が目の前にあった。
日本人相手のビジネスではないという実態
上海の人口は1921万人(2009年末時点、JETRO調べ)で、東京23区の人口のおよそ2倍。今、この重慶市に次ぐ中国二番目の都市である上海に、多くの日本企業が進出してチャイニーズドリームを手にしようと悪戦苦闘している。その日本企業を顧客対象として、ITを提案するシステムインテグレータ(SIer)たちは、どんな状況にあるのか。それを知るのが訪中の目的だった。
現地では、日本のSIerの1社であるJBCN(上海)の小祝薫・総経理に面会した。親会社はJBCCホールディングスで、上海のほか大連と広州にも拠点をもち、中国向け事業に積極的な企業だ。小祝氏は中国戦略を推進するキーマンである。その同氏が興味深いことを口にしていた。「日系企業でも、IT部門の責任者は大半が中国人だよ」。
上海の大卒初任給は3000~4000元(3万7500~5万円)程度で、中国のGDP(国内総生産)が2010年に日本のそれを上回ることが確実とはいえ、日本の人件費のほうがまだ高い。それを考えれば、先行投資の状況であろう中国法人に、日本からITスタッフを呼んで駐在させるのは現実的ではない。
こんなデータもある。IT調査会社ノークリサーチがユーザー企業を対象に今年9月に行った調査では、中国現地に拠点を構えている企業のなかで、42.2%は「現地法人の責任者に(IT導入の)判断を任せる」という回答が出ている。日本本社からITプランを提示するのではなく、現地で考えさせているわけだ。
薫事長や総経理は日本人でも、それらの経営層はITに詳しくない。結果的に中国法人の中国人がITの投資計画を立案していることになる。SIerにとっては、日系企業でも、ITを提案する相手は中国人ということだ。「日系企業なら日本人相手だろうから提案しやすい」という安易な推測は間違っている。
しかしながら、前出の小祝氏は「マイナス面だけではない」とも言う。「中国人は、給料が高い企業が見つかれば迷いなく会社を移る。そうなると、ITの運用手法が分からなくなり、現場は混乱する。その対策として、情報システムの運用をITベンダーに丸ごと任せたいというニーズが強くなっている」。さらに、「中国のITスタッフの人件費はかなり高騰していて、ITベンダーに運用を支払うほうが安いケースも出てきた」と追い風を実感している。
上海に進出する日本企業は増えており、それらを対象にするだけでもビジネスは成り立つ。だが、推測に頼るのではなく、日本の中国法人のIT部門の状況を熟知したうえで戦略を練る必要があることは確かだ。(木村剛士)
11月中旬に上海を訪れた。中国に足を運んだのは12年ぶりで、当時は、日本の国道並みの広い道路がまだ砂利道、その道をわがもの顔で走っていたのは無数の自転車だったことを覚えている。久しぶりに視察したその土地に、当時の面影はなく、東京と同じ建物を備えた近代都市が目の前にあった。
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