日本IBMは2010年初めに広域市場において「パートナー優先」の方針を掲げた。この基本路線を具現化するために、中堅・中小企業へクラウド・サービスを提供するパートナーモデル「IBM サービス・オリエンテッド・パートナリング(SOP)」は、広域事業におけるクラウドビジネスで肝となる戦術だ。これを活性化するには、既存・新規パートナー間でクラウド・サービスをつくり出す「協業パートナー」のリレーションが欠かせない。その成功パターンの代表例として「ニフティクラウド」を活用したパートナリングがある。(谷畑良胤)
インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)のニフティが、「Amazon EC2」などと同様に、使用するOSからユーザーが選択できるタイプのIaaS型クラウド・サービス「ニフティクラウド」を開始したのは2010年1月27日。ユーザーがこのIaaSを利用する場合、サーバーの準備にかかる時間は約5分、申し込みが完了次第、ユーザーのタイミングでサーバーを起動できる。世界を席巻する「Amazon EC2」を意識して、英語ではなく日本語サポートが整うサービス基盤だ。
ニフティがIaaSへの参入を検討していた2009年後半。以前からサーバー導入などで取引のある日本IBMのパートナーであるデジタルテクノロジーと“再会”する。日本IBMがサービス基盤のインフラ整備を支援し、ニフティは日本IBMの「SOP」の一角としてクラウド・サービスの核となることを目指すことになった。
「ニフティクラウド」の導入実績は、これまでに500社を超えている。しかも、ここへきて「客層が大きく変わってきた」とニフティの福西佐允・営業本部サービスソリューション営業部部長は話す。
サービスを開始した当初はメディア企業のウェブサイト運営やゲーム会社などのサービス基盤として利用が拡大した。ところが、ここへきてデータセンターを所有していないシステムインテグレータ(SIer)や独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が、自社でクラウド・サービスを展開するための基盤とするニーズが高まっているというのだ。ニフティのコンシューマ向けISPとしての実績は言をまたない。だが、「法人向け、とくにIT業界関係に販売するノウハウやソリューション展開は不得手」(同)と認める。そこで、デジタルテクノロジーや日本IBMがこれらITベンダーを含め、「ニフティクラウド」の基盤を利活用してクラウド・サービスを展開するための支援をITベンダーらに講じているのだ。
「ニフティクラウド」を取り巻くデジタルテクノロジーのような「協業パートナー」は、10社に及ぶ。デジタルテクノロジーの新井剛・営業部部長は「場所を再販するのが目的ではない。SIerなどが『ニフティクラウド』上でビジネス展開して成功モデルをつくることが目的だ」という。ニフティも「当社、協業パートナー、ユーザーの『エコシステム』を構築し、三者が成功するモデルにする」(福西部長)と、将来構想は広がりをみせている。

「協業パートナー」として連携するニフティの福西佐允・営業本部サービスソリューション営業部部長(左)と同社を支援するデジタルテクノロジーの新井剛・営業部部長