欧米での強固なビジネス基盤を手にしたNTTデータは、今、「標準化」と「独自性」の狭間で揺れている。米国大手SIerのKeane（キーン）を傘下に収めるなど、相次ぐM＆Aによって同社グループ約5万人の社員のうち、外国人社員がおよそ2万人を占めるに至った。ただ、今の状態を酷評するならば“とりあえず大きくなった”にすぎない。NTTデータとしての一体感を、これからどう出していくのかが重い課題として浮き彫りになっている。

　SIerのNTTデータの技術的基盤であるアプリケーションプラットフォームをいかに標準化するか、データセンター（DC）やネットワークインフラを世界規模でどう確保していくかなど、グローバルSIerならではの課題を突きつけられることになる。アプリケーション開発基盤やクラウド/SaaS基盤「BizXaaS」（ビズエクサース）など、NTTデータが国内で独自につくり上げてきたプラットフォームがあるが、こうした“国内標準”のグローバル化は緒についたばかり。ITプラットフォームを担当する山田伸一常務は、「登山にたとえるなら、まだ三合目」と、厳しく評価する。

　一方で、DCやネットワークなど物理レイヤでのアウトラインはみえつつある。海外ではNTTコミュニケーションズや、NTT持ち株会社がグループ化したディメンション・データ（南アフリカ共和国が本拠）との連携を進め、“オールNTTグループ”のリソース活用を積極的に図る。国内でのオールNTT体制は、あまりに強大すぎて業界内外の警戒感を招きかねないが、海外では別。むしろグループの経営リソースを効率的に活用しなければ苛烈な競争に勝てない。グローバル担当の榎本隆副社長は、「NTTグループの幹部には、同期生が少なからずいるので、話しやすい」といい、ビジネスソリューション担当の神田文男執行役員は、「分社化以前に机を並べていた同期がまだ第一線で活躍しているうちに、海外での協業体制の枠組みをつくりたい」と、人脈を生かしたインフラリソースの共有化を急ぐ。

　難航が予想されるのは、上位レイヤに相当するアプリケーション層だろう。「グローバル標準を貫くのか、複合的な組み合わせにとどめるのか…。個人的な見解では後者が現実的。強引な標準化は顧客にとって逆にマイナスになりかねない」（山田常務）と、心情を吐露。さらにNTTデータがまだ十分な存在感を確保しきれていない中国・ASEANでの対応など、知恵を絞る余地は大きい。「とくに中国は地理的に近いので、当社が自ら出て行くべきではないか」（別の幹部）との意見が根強い。

　メンタル部分での意識形成も欠かせない。約2万人の外国人社員は、今後、増えはしても減ることはない。世界中の社員が知見を共有し、NTTデータらしさをどう醸成していくのか、ここからが正念場だ。（安藤章司）