日本IBM(橋本孝之社長)は、国内の有力独立系ソフトベンダー(ISV)との連携を強める戦略の一環として、1月26日、ISV向けのセミナー「Partner Ecosystem for IBM Smarter Planet 2011」を東京・六本木で開催した。セミナーで、米IBM ISV&デベロッパーリレーションズのトップを務めるジム・コージェルゼネラルマネージャは、パートナー支援プログラム「インダストリー・ソリューション・スペシャリティ」の日本での開始を発表した。(取材・文/ゼンフ ミシャ)

セミナー会場の様子
日本IBMは、ITを使って地球の“スマート化”を図るコンセプト「Smarter Planet」を軸にしたソリューション事業の拡大に向け、ISVとの連携強化に注力している。今回のセミナーは、IBMが提供する業種特化型の製品ソリューション(インダストリー・ソリューション)とその基盤となるフレームワークに国内ISVのアプリケーションを連携させ、短納期に販売・流通ができる「パートナーエコシステム」づくりに向けた取り組みだ。
ISVのグローバル進出も支援
 |
日本IBM 川原均専務執行役員 ソフトウェア事業担当 |
セミナーの冒頭で、日本IBMの川原均専務執行役員ソフトウェア事業担当は、「当社はソフト開発パートナー(ISV)を対象に、技術やスキル育成、マーケティングなどを支援することによって、パートナー企業がこれまで縁がなかったお客様に触れる機会をつくっていく」と、支援の目的を説明した。具体的には、IBM製品での稼働検証やクラウド環境での稼働検証に加え、マーケティング費用の一部をカバーする支援金や製品プロモーションを行うといったかたちで、ISVをサポートする。
パートナーのグローバル進出も支援していく。日本IBMソフトウェア事業ISV&デベロッパー事業推進の佐内桐梧部長は、「『ゴー・グローバル』をモットーとして、オープン標準への準拠やグローバルマーケティングなどをサポートし、ISVの海外進出や海外での事業展開をお手伝いしていく」と支援策を語った。
新しいプログラムを実施
 |
日本IBM ソフトウェア事業ISV& デベロッパー事業推進 佐内桐梧部長 |
米IBMソフトウェアグループISV&デベロッパーリレーションズのジム・コージェルゼネラルマネージャは、支援金制度やIBMとの共同販売のほか、業界イベント参加機会の優先提供などの特典を与えるパートナー支援プログラム「インダストリー・ソリューション・スペシャリティ」の日本での開始を発表した。このプログラムは、医療や製造、金融などの業種に強いISVやシステム・インテグレータ(SIer)を認定パートナーとして獲得するのが狙いだ。
本紙は、コージェル氏に「インダストリー・ソリューション・スペシャリティ」についての単独インタビューを行った。
<インタビュー>米IBM
ソフトウェアグループISV&デベロッパーリレーションズ
ジム・コージェルゼネラルマネージャ
──「インダストリー・ソリューション・スペシャリティ」の取り組みは、IBMにとってどのようなメリットがあるのか。 コージェル ひと言でいえば、ISVやSIerの「インテリジェンス(知恵)」がほしい。「Smarter Planet」に基づくソリューション事業の加速化を目指して、ユーザー企業はどういうビジネスを展開しているか、当社のソリューションに何を求めるか、ということを正確に把握しなければならない。地域に密着しているISVやSIerはユーザー企業に最も近く、クライアントの特徴やニーズに精通しているので、われわれにとって必要不可欠なパートナーだ。
パートナービジネスは、現在IBMビジネス全体の35%を占めており、「インダストリー・ソリューション・スペシャリティ」の実施によって、ますます拡大していく。都市や地域によってユーザー企業のニーズが大きく変わるので、各都市・地域で最も影響力をもっているISV/SIerをパートナーとして獲得したい。
──パートナー候補との関係づくりに向けての具体的な施策は?
コージェル 一つは、「コネクト・トゥ・ウィン」という取り組みだ。この取り組みでは、ISVなど、パートナー候補の代表者を当社に招いて、各自に自社ビジネスを紹介するために2分間の時間を与える場を設けている。「コネクト・トゥ・ウィン」は、協業によって互いにどんなビジネスチャンスが生まれるかを検討し、適切なパートナーを選ぶことを目的としている。
──「インダストリー・ソリューション・スペシャリティ」を今後どう進めていくか。
コージェル まずは、「Smarter Planet」のビジネスを展開するのに最適な業種を、ISVとともに見定めることを重点に置いている。日本では、おそらく医療、製造、金融、公共の四つになると思われる。各業種のビジネス内容を細かに分析し、最適なソリューションを提供していく。
──パートナー獲得の目標は?
コージェル 2011年中に、50社のISVを獲得することを目指している。