【米ラーレイ発】米国東部のノースカロライナ州にある世界最大級の研究学園都市、リサーチ・トライアングル・パーク(RTP)。ここにIBMではインドに次ぐ規模となる巨大な開発研究拠点がある。日本なら春先の陽気のなか、野鳥や小動物が戯れる松並木に囲まれた自然豊かな場所にあるIBMの同施設内に入った。

RTPの玄関口。受付のある002号棟

 ここは、IBMの「System x」開発とデータセンターの総本山。日本のサーバー販売企業の関係者や開発担当者がよく訪れる。2008年に、は州政府の補助を受け、約360億円を投じて「Project Big Green技術」を利用したデータセンター「RTPデータセンター」を新設した。最近では、日本IBMの発表した「パブリッククラウド」の中核拠点として紹介されたこともある。データセンターだけで約6000m2の床面積を有し、社員約1万人が製品・サービスの最先端技術を日々研究している。

周囲にx86サーバーの最新製品が並ぶプレゼンテーションルーム「Blue Ridge Room」で、製品開発の事業戦略を聞く

 IBM敷地内の002号棟で受付を済ませると、施設の案内人であるドン・ロイ氏の案内で、「System x」製品などが壁際に並ぶプレゼンテーション室「Blue Ridge Room」に入った。ここでは、「System x」のタワー、ラックマウント、ブレードのサーバー製品の技術や販売動向を聞いた。翌日に発表する「System x」新製品の概要もここで聞くことになった(新製品は後日詳報する)。

 まずは、IBMサーバー製品で最も販売ボリュームの大きい「System x」領域を担当するマイク・ギブソン・ハイボリュームビジネスラインプログラムディレクターから近況を聞いた。同社のタワー/ラックマウント型サーバーは、2010年、「記録的な素晴らしい成長を遂げた」という。「顧客の要求に応じて、従来からの製品ポートフォリオをリフレッシュし続けてきた」ことなどが販売に結びつき、世界での売上高が前年比33%、日本では24%も伸びた。日本に関していえば、税引前利益が10%に達するなど、「競合他社との価格競争が厳しいなかで高い利益率を確保できた」と自信をみせる。また、同社が指標として使う「Run Rate」と呼ぶパートナー販売の稼働率も、高い数値で推移しているという。

マイク・ギブソン・ハイボリュームビジネスラインプログラムディレクター

 クラウドコンピューティングが普及に向かう今、ハードウェアの需要は年々減少傾向にあるとされる。だが、ギブソン マネージャーは「x86サーバー市場は、まだ成長の余地が大きい。さらに価格競争力を上げ、技術革新を続ける」と宣言。成長はさらに拡大するとして、同社が掲げるコミットメント「4P」に引き続き取り組むと述べた。

 「4P」とは、「Product」「Price」「Promotion」「Place」の四つの「P」を表す。ギブソン マネージャーは。このコミットメント「4P」を、「顧客の要求に応じた製品のポートフォリオをつくり、それに応じた価格競争力のある製品を研究開発し続け、正しい場所でカスタムメードし、リセラーにベストな技術情報を与えつつ適切なトレーニングを実現する」と説明した。

ジェイ・ホルブルック・ハイバリュー製品マネージャー

 次に製品関連の説明をしてくれたのは、ジェイ・ホルブルック・ハイバリュー製品マネージャーだ。IBMでいうところの「顧客の要求」がどう変化し、それに対してどんなテクノロジーを提供しているかを解説してくれた。ホルブルック マネージャーによれば「変化し続ける顧客のワークロードの要求に応える必要がある。最近では、とくにIBM第5世代エンタープライズ『Xアーキテクチャ(eX5)』のテクノロジーを搭載したサーバー製品が大きく成長している」という。

 「eX5」は、x86サーバーの常識を破る大容量メモリで、ワークロードに最適なパフォーマンスを選んで構成できる柔軟性と拡張性を実現する。「eX5」搭載のサーバー製品は、2009年に比べ販売台数比で3倍に成長しているという。サーバー製品領域は、世界的にコモディティ(日用品)化した。特にx86サーバーは、製品ごとの差別化が難しくなっている。各メーカーは、サーバー製品の特徴を訴求しようとしているが、導入するユーザーは、必要な性能要件を満たしさえすれば、価格で決めてしまう。

 IBMが繰り出す「eX5テクノロジー」は、ユーザーのこうした風潮に待ったをかける。これまで4Uラック型だけに搭載していた「eX5テクノロジー」を、第5世代ではブレード型や2Uラックマウント型の製品まで、適用を進めている。

 「eX5テクノロジー」の特徴を、ホルブルック マネージャーは「メモリスロット拡張ユニット『MAX5』や、ハードディスクと比べ圧倒的なI/Oを叩き出すフラッシュ型記憶装置『eXFlash』への対応など、競合製品に比べて圧倒的な価格競争力がある。『MAX5』に関しては、仮想化環境を構築するときにボトルネックになっていたトラフィックの問題などを技術的に解決する」と解説。「仮想化環境やデータ容量が増え続けるデータベースなどへの要求に応えられる製品だ」として、ヒューレット・パッカード(HP)やデルの同等製品と性能を比較しながらIBMサーバーの優位性を示した。

 最近ではクラウドの普及に伴い、ユーザー側で仮想環境を構築するケースが増えている。また、ユーザーのシステムをホスティングするデータセンター側でも、IT基盤となるサーバーの性能に対する要求が高くなっている。ホルブルック マネージャーは「『eX5テクノロジー』を搭載したx86サーバーは、最も成長している分野だ」と、顧客のワークロードや要求に応えられる製品領域として、今後も研究開発に力を入れていくと語った。

ハーシュ・カッチー・ブレードセンター製品マネージャー

 タワー型/ラックマウント型に加え、近年、ユーザー側で既存システムを無駄にせず持続可能なシステム設計にすることを求め始めている。IBMのブレードサーバー「IBM BladeCenter」も、こうした顧客の要求に応える形でイノベーションを遂げてきた。この点について、ハーシュ・カッチー・ブレードセンター製品マネージャーは「当社のブレードサーバーは、仮想化やデータベース、アプリケーション向けに最適なパフォーマンスを提供する。『eX5』のイノベーションによって、ブレードサーバーによるデータベースや仮想化環境の構築で、かつてない性能を発揮する。多くのユーザーが既存システムを有効活用しつつ統合する上で、ブレードサーバーを求めているが、当社製品はユニークな提案ができる」と語る。

 例えば、売れ筋のブレードサーバー「IBM BladeCenter HX5」は、プロセッサに依存せずにメモリを増強する「eX5」メモリ拡張ユニットの「MAX5」によって、最大320GBのメモリ拡張ができる。また、カッチー マネージャーは「『MAX5』との接続によって、クラス最大級のメモリ拡張が可能だ。プロセッサを追加購入することなくメモリ容量を拡張することができ、ソフトウェアライセンスのコストを削減できる」という。さらに、ブレードサーバーが成長する理由として「ビデオ会議の普及やネットワーク利用の拡大などの要求が増えており、フレシキビリティの高い当社のブレードサーバーが受けている」と語り、自信をみせた。

世界にあるIBMのデータセンターの中核施設

 このレクチャーの後、RTP内のIBM施設を徒歩で10分程度“北上”した。IBMが誇る世界の中核データセンターの様子は、後日レポートする。(谷畑良胤)