個人を報奨対象としてモチベーションアップにつなげ、ゆくゆくはワークスタイルも変貌させていく──。シマンテックはリセラー社内の個人向け報奨金プログラム「Symplus」を開始した。シマンテックパートナープログラム（SPP）のパートナー専用ページ「Partner Net」に登録している営業担当者や技術者が表彰の基準を満たせば、報奨金を獲得することができる。報奨金が累計50ドルに達すると、シマンテックが該当者に対して四半期ごとに獲得金額をチャージしたVISAデビットカードを発行する仕組み。同社が刷新したパートナー制度の本格始動に向けての支援策の一つだ。

　米国では、個人を対象に報奨を行っているメーカーが多いそうだ。だが、日本ではこういったかたちの報奨制度を展開している外資系企業は見当たらない。シマンテックの個人報奨では、営業担当者だけでなく技術者、マーケティング活動も報奨対象としていることが特徴的だ。

　この個人報奨制度を公表するにあたって、シマンテック日本法人では内部で議論を交わし、主要なパートナーの意見も聞いた。パートナーは軒並み肯定的だったというが、なかには「いい制度だが、うちは参加できない」というパートナーもいた。営業成績の優秀な社員には自社内でインセンティブを与えている企業が多い。そうであったとしても、「組織として仕事をしている」という経営者の考え方が「うちは参加できない」という言葉になって現れてきていると、シマンテックではみている。

　日本ではバブル経済が崩壊して以降、終身雇用制度や年功序列制度が揺らいでいる。「会社が社員を選ぶだけでなく、社員も会社を選ぶ時代になっている。組織にがんじがらめになるのと、相応の努力が認められて自身のモチベーションを高めることができる企業の二つがあるなら、社員はどちらを選ぶだろうか」と、シマンテックの内田和弘常務執行役員は疑問を呈する。企業が「個」を尊重することは、会社への帰属意識を高めるうえで重要な要素となるというのだ。

　ある外資系の企業がグローバルでの戦略をそのまま日本に落とそうとしたときに、パートナーからかなりの批判の声があがったという話を聞いたことがある。そうした点について内田常務執行役員は、「これまで『いい』と分かっていても日本では実施しなかった施策が多い。だが、いいものは日本でも実施して個人のスペシャリティを高めていこうと、今回の個人報奨を開始した」と話す。いい制度でも日本の文化に合わないという理由でフィルタリングされた施策も多いことだろう。

　当然ながら、シマンテック製品の販売を促進するための施策ではあるが、パートナー企業にとって個人報奨が少しでもプラスになると考えたならば、受け入れてもよさそうだ。（鍋島蓉子）