国産OSS（オープンソースソフトウェア）の人事・給与・勤怠ソリューション「MosP」を手がけるマインドの屋代和将部長は、「OSSをSaaSで公開する場合、GPLではソースコードの再頒布にあたらないので、OSSの特性を生かすために新しいバージョンからはAGPLに基づいて公開しました」と話す。OSSのライセンスは、7割以上が採用するGPLをはじめとして、AGPL、BSDなどさまざまなライセンスが存在する。それぞれのライセンスが規定する条件に基づいてソースコードを公開して、誰でもそれを自由に入手でき、プログラムを自由に使ったり、改変して配布したりすることができる。その一方で「OSSライセンス」が多様化してきたために複雑さが増幅し、それが利用を躊躇させる一因ともなっているようだ。

　このところ、法人がOSSを利用するケースが増えている。ベンダーの都合に振り回されること（ベンダーロック）を排除し、低コストでの導入が可能になることが進展の要因として挙げられる。また、OSSに信頼性が備わってきたことも歓迎されている。リーマン･ショック以降、OSSが着目されるようになり、OSSの活用ビジネスが伸びたという調査報告もある（情報処理推進機構『第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査報告書』2010年4月）。さらには、OSSのさまざまな課題について、著作権などの法律を交えて解決していくことを目的に、5月30日に「オープンソースライセンス研究所」が立ち上がった。OSSの著作権は米国の法律がベースとなっているので、日本ではどうなるか、という問題を照らし合わせて考える必要がある。研究所に協力メンバーとして参加する大堀健太郎弁護士・弁理士は「近年、米国ではGPL違反を争点とした訴訟が起きていて、欧州にも飛び火している。日本でも同様の紛争が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

　研究所に参加するオージス総研は、自社のSNS上ではOSSライセンス研究会というコミュニティを立ち上げている。システム構築のツールとしてだけでなく、製品にも組み込まれるようになったOSS。「システムやソフトウェアを提供するときに、想定外のOSSを利用していないかどうかを確認して、ガバナンスを効かせる必要がある」（オージス総研グローバルビジネス推進部の細谷竜一部長）として、同社では社内にオープンソースの統括部門「エンタープライズ・オープンソース・センター」を設けてOSSライセンスによるリスクを診断し、トラブルを回避する取り組みを行っている。とくにグローバルでシステムを展開していくとなると、国ごとの法律でリスクは変化する。OSSは利便性が高いが、想定されないOSSのソースコードが1行でも混入していれば、ライセンス侵害のリスクにさらされかねない。OSSを利用する企業にとっては、留意しなければならない懸案事項である。（鍋島蓉子）